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by ST25
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 原田マハ 『楽園のカンヴァス(新潮文庫、2014年)

 

 画家アンリ・ルソーの世に出回っていない作品の真偽をめぐって、ルソーをかつて研究していた日本人女性とMoMAのキュレーターであるアメリカ人男性がその見極めを競うことになった。

 その過程で名画「夢」に込められた想いやそれをめぐる物語が明らかになる。そこでは、ルソーが愛した女性ヤドヴィカや、ルソーを早くから評価していたピカソも登場する。さらに、名画に関わる人たちの様々な思惑。それらが絡み合い、絵画の魅力を深く味わいつつ、緊張感あるミステリーが展開していく。

 これはおもしろい。

 筆者の名を一気に世に広めた出世作となったのも納得できる。

 名画の背景にある物語を味わうという知的なおもしろさと、ミステリーとしてのドキドキわくわくがどちらも楽しめる。しかも、それぞれがとてもおもしろい。




 原田マハの作品は他のも色々読んでみようと思った。


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 松岡圭祐 『黄砂の籠城(上・下)(講談社文庫、2017年)

 

 義和団事件を事実を基に描いた小説。民族運動の炎が燃え盛っている清に取り残された列強11か国。足並みが揃わない彼らだが、そんな中、日本人駐在武官・柴五郎たち日本人が奮闘する。

 これは素晴らしい。

 列強から屈辱を受け、あるいは、苦しい生活への不満が募り、不合理であってもカタルシスを感じさせてくれるものへの熱狂的な支持が高まる。そうして知識も武器もないような者たちが、ただ感情だけで外国人へと敵意をむき出しにしてくる。そして、刀で拳銃を持った外国人へも躊躇うことなく突進してくる。その不合理ながらエネルギッシュでパワフルな義和団の描写は相当に恐怖を感じさせる。

 そして、それに立ち向かう公使館密集区域に閉じ込められた列強の公使や軍人たち。帝国主義の国際政治を反映したかのような自国の利益ばかり考えるものばかりで、義和団に対する危機感が弱い。そんな中、柴五郎ら日本人たちが、謙虚、忍耐、統率といういかにも日本人らしいやり方で奮闘する。

 時代の雰囲気を見事にとらえ、そのときの状況の緊張感を常に感じさせてくれる。それでいて、ミステリー的なおもしろさも兼ね備えている。上下巻にまたがるが、全く長さに冗長さを感じることはない。映画化必至だろうが、その際は是非ともドキュメンタリー的なリアルなものにしてほしいものだ。


 ちなみに、本書『黄砂の籠城』が日本側・列強側から義和団事件を描いているのに対して、『黄砂の進撃』(講談社文庫)は義和団・清の側から義和団事件を描いている。ただ、『進撃』の方は内容も薄く、掘り下げも浅いため、正直あまりおもしろくはない。


 

 

 原田マハ 『モダン(文春文庫、2018年)

 

 ニューヨーク近代美術館(MoMA)で働く人たちを描いた5篇の短編からなっている。

 世界のモダンアートの最先端を舞台にしているため、全編を通して都会的で洗練された印象が漂っている。とはいえ、ちょっと幻想的な話やちょっと心温まるような話もあり、その味付けが無機的な感じを与えない。

 登場する絵画は、アンドリュー・ワイエス「クリスティーナの世界」、ピカソ「アヴィニョンの娘たち」など。

 初めて原田マハの小説を読んだけれど、いろいろと人を惹きつけるモノや題材を描いているなと感じた。今回の小説であれば、憧れを抱く大都会ニューヨーク、高等な教養的な領域である美術、かっこよく働く女性といったものだ。憧れるけれど行ったことないとか、知っていて語れたらかっこいいなとか、心の中で密かに思っているものを描いているのだ。そのため、ちょっとその憧れていたものに触れられたような気持ちにしてくれる。

 他の作品も読んでみたくなった。そして、今後、ちょっとおしゃれな気分や高尚な気分になりたいときに手に取ろうと思った。



 住野よる 『また、同じ夢を見ていた(双葉社、2016年)

 

 『君の膵臓をたべたい』の作者の第二作。『膵臓』が良かったから、他の作品も読んでみた。

 小学生の少女がさまざまな出会いを通して、「幸せとは何か?」を探っていく。



 帯の裏に、本屋の店員の「絶賛の声」が書いてある。

 「めっちゃ良かったです。」、「素敵だ!なんて、素敵な一冊なのだろう。」、「言葉の一つ一つに力が込められていて、夢、希望、挫折、絶望、心揺さぶられました。」などなど。

 小学生の感想か!まったく内容が伝わらない。ありきたりの表現ばかりで、言葉が貧困すぎる。だから、「書店員さん」なんてただの一般人でしょ!?

 と、読む前は思っていた。

 しかし、読み終わった後の今ならわかる。評価のしようがないのだ。内容がないのだ。話がありきたりすぎるのだ。


 『膵臓』も、前半を中心に内容の薄さ、表現の拙さを感じたけど後半の話の展開でまくり切っていた。しかし、こちらは後半の末脚も不発のまま終わってしまった。

 ドンマイ!


 須田亜香里 『コンプレックス力(産経新聞出版、2017年)

 

 SKE48の須田亜香里が今までの人生やSKEでの活動で考えてきたことを実際の話もたくさん交えながら語っている本。

 自己啓発本にありがちだと思われる、抽象的に漠然と話が進むということがなく、また、本人が実際に行動してきたことであるだけに説得力がある。そして、自伝的な面も大いにあって感動するところもある。

 ところどころで「思考術ワーク」という読者が実践する用の自己啓発的な内容も入っている。自分は使わなかったが。
 
 読み終わってから2週間くらい経った今、教訓的内容で覚えていることは一つもない。とはいえ、自伝的な本として十分楽しめた。是非とももっと色々なメンバーの自伝を読んでみたいと思った。人の数だけドラマがあると言うし、そのドラマ性こそAKBグループの楽しさでもあるし。


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