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 松岡圭祐 『黄砂の籠城(上・下)(講談社文庫、2017年)

 

 義和団事件を事実を基に描いた小説。民族運動の炎が燃え盛っている清に取り残された列強11か国。足並みが揃わない彼らだが、そんな中、日本人駐在武官・柴五郎たち日本人が奮闘する。

 これは素晴らしい。

 列強から屈辱を受け、あるいは、苦しい生活への不満が募り、不合理であってもカタルシスを感じさせてくれるものへの熱狂的な支持が高まる。そうして知識も武器もないような者たちが、ただ感情だけで外国人へと敵意をむき出しにしてくる。そして、刀で拳銃を持った外国人へも躊躇うことなく突進してくる。その不合理ながらエネルギッシュでパワフルな義和団の描写は相当に恐怖を感じさせる。

 そして、それに立ち向かう公使館密集区域に閉じ込められた列強の公使や軍人たち。帝国主義の国際政治を反映したかのような自国の利益ばかり考えるものばかりで、義和団に対する危機感が弱い。そんな中、柴五郎ら日本人たちが、謙虚、忍耐、統率といういかにも日本人らしいやり方で奮闘する。

 時代の雰囲気を見事にとらえ、そのときの状況の緊張感を常に感じさせてくれる。それでいて、ミステリー的なおもしろさも兼ね備えている。上下巻にまたがるが、全く長さに冗長さを感じることはない。映画化必至だろうが、その際は是非ともドキュメンタリー的なリアルなものにしてほしいものだ。


 ちなみに、本書『黄砂の籠城』が日本側・列強側から義和団事件を描いているのに対して、『黄砂の進撃』(講談社文庫)は義和団・清の側から義和団事件を描いている。ただ、『進撃』の方は内容も薄く、掘り下げも浅いため、正直あまりおもしろくはない。


 

 
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