by ST25
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J. ウォリック 『ブラック・フラッグスーー「イスラム国」台頭の軌跡(上・下)』 (伊藤真訳/白水社、2017年)
「イスラム国」へとつながる組織の創設者ザルカウィの生い立ちからイスラム教過激派として活動するまで。
親米派であるヨルダンのアブドゥッラー王子の板挟みの苦悩。
ザルカウィの行方を追う担当になったCIAのネイダ・バコス。
イラクで活動する米軍特殊部隊司令官のマクリタス大将。
イスラム国のリーダーとなったバグダディ。
副題である『「イスラム国」台頭の軌跡』を、イスラム国の内部だけを取り上げるのではなく、上記のような多様な登場人物や組織・国家に焦点を当てることで明らかにしている傑作。ピュリッツァー賞受賞作。
イスラムvs欧米という単純な図式に落とし込んで安穏に浸ることがない。また、「過激派」の一語で理解した気になることもない。
それぞれに様々な立場・状況が絡み合っている複雑さをとても分かりやすく描いている。
本書のメインテーマではないが、イスラム教の中の考えの違いもそれなりに理解することができる。スンナ派とシーア派はもちろんのこと。世俗派と過激派、イスラム国に対するイスラム教指導者たちの批判なども。
日本でそんなに話題になった本だとは思えないけれど、もっと広く読まれるべき傑作。
個人的には、この本以来、白水社の歴史もので、上下巻に分かれている読み応えがあるものにはまってしまった。
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