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by ST25
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 田中拓道 『リベラルとは何か』 (中公新書、2020年)

 
 日本ではいつの間にか否定的な意味を込めて使われるようになった「リベラル」だが、当然、それまでは学術的な用語として、一つの立派な立場を表すもとして用いられていた。

 本書はリベラルが誕生した17世紀から、紆余曲折を経て現代にいたる歴史を思想史的に追っている。

 王や国家の介入を排すべきだとする古典的自由主義。アダム・スミスの「神の見えざる手」はその考えを象徴的に表している。そして、それが国家による社会保障を求める考えへと変容していく。そうして社会権や福祉国家が誕生した。

 1970年代に先進国で一定の経済成長を成し遂げたからか、文化的なリベラルが盛り上がりを見せる。多様な価値観の肯定を求めて、あらゆる分野で社会運動が盛り上がった。反核、環境、女性解放などだ。

 ここまででもリベラルという言葉の多義性が垣間見える。どこをとって語るかで議論は全く違ったものになる。

 そんな危ういリベラルに関して、著者はさらに議論を進める。

 すなわち、排外主義ポピュリズムが台頭するメカニズムに関する研究、そういう情勢の中でのリベラルの取りうる針路といったものまで論じている。もちろん、これは仮説や一つの見識にすぎないが、現代におけるリベラルを考える一つの視角を与えてくれる。


 レッテルを貼られてしまったリベラルが今後の日本でも生き残れるか、それともここで消滅してしまうかは、新たな道をリベラル派が提示できるか否かにかかっているだろう。イギリス労働党が「第三の道」を提示(採用)して生き延びたようなことが日本で起こるのだろうか。

 荒れ地であれば可能性は開かれていると思うのだが。


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