by ST25
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高野 和明 『ジェノサイド(上・下)』 (角川文庫、2013年)
初出は2010年の雑誌『野生時代』。
アフリカの部族に突然変異によって新しい人類が誕生する。
その新人類な子供は我らホモサピエンスよりはるかに優れた知能を有している。
それを知ったアメリカ政府はどう対応するのか?
そしてそれに立ち向かう日本の薬学の大学院生、アメリカ人傭兵などを描く壮大なミステリー。
とてもおもしろい。物語としてもおもしろいし、知的な思考実験・新しい問題提起としてもおもしろい。
動物愛護、生物多様性を無邪気に唱えている人たちは、人類をはるかに上回る知性を有した新人類の誕生にどう対応するのだろうか? もしその優秀な新人類が現在の人類を滅ぼそうとしてきたらどうする? 呑気に共生を探るとか言うのだろうか?
この小説に登場するアメリカ政府――書かれた年代的にブッシュ政権をイメージしていると思われるが、おそろしいほどトランプ政権とも類似している――の対応も十分に理解できる。というより正解なのではないかとさえ思う。
楽しみながら新しい重大な問題に気付かせてくれる。
これこそまさに意味のある小説と言えるだろう。
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