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奥田英朗 『空中ブランコ』 (文春文庫、2008年)
『町長選挙』へと続く、精神科医・伊良部シリーズの第2弾。 直木賞受賞作。
悩みすぎているサーカス団員、ヤクザ、医者、プロ野球選手、女流作家が無邪気で子供な伊良部に感化され影響を受けていく。
話としては「義父のズラ」が一番おもしろかった。
「女流作家」は、そこで出てくる小説観、大衆文化観と、偏屈な作家の話がおもしろかった。
そんだけ。
思えば、直木賞受賞作って、初めて読んだ。
山田ズーニー 『おとなの小論文教室。』 (河出文庫、2009年)
もともと特別なオンリーワンなんだから、がんばって自分のありのままを表現すればいいんだよ、ということだけを言っているカウンセリング的、自己啓発的な異色の文章入門。
正しいことも言ってるけど、筆者とメールを引用される読者たち(みんな匿名)が醸し出す全体的な空気が、生ぬるくて気持ち悪い。
しかも、自分たちが自分に自信を持つための内容が延々と続いていたのに、最後はそんな自分たちのことは棚に上げて、いきなり他人の説教が始まってしまっていてウザイ。 ( だいたい「批判は何も生まない」とか言ってたのとも矛盾してるし。)
まあ、いつまでもがんばる自分に酔いしれていればいいんではないでしょうか。 何事かを成し遂げることはなくても。
奥田英朗 『町長選挙』 (文春文庫、2009年)
ナベツネ、ホリエモン、黒木瞳をそれぞれモデルとし、イメージ/偏見をかなり押し進める方向に戯画化した( しかし本人であることは明らかな )登場人物たちが、幼稚園児をそのまま大人にしたような精神科医・伊良部と対決する3つの短編と、島を二分する町長選挙に伊良部が巻き込まれる1つの短編の計4作品を収めている。
戯画化されたナベツネ、ホリエモン、黒木瞳の描写が秀逸で、その滑稽さは愛くるしいほど。
「町長選挙」の方は、人物の描き方も普通だし、伊良部もそんなに活躍しないし( いきなりのレイザーラモンはウケタけど )、終わり方も優等生的だし、で、イマイチ。
まあ、いずれにしても、軽~いエンターテイメント小説。
舞城王太郎 『スクールアタック・シンドローム』 (新潮文庫、2007年)
いかにも今風な作家の今風な小説。 収録されているのは、「スクールアタック・シンドローム」、「我が家のトトロ」、「ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート」の3作。
暴力の伝染、暴力の連鎖の話が中心。 ソマリアはもちろんのこと、ブッシュのアメリカとか厳罰万歳死刑万歳の今の日本の社会状況なんかをも思わせる社会派でもある。
ただ、暴力が伝染・連鎖するメカニズムや理由の洞察は、深くはない。 というか甘い。 「弱い者が恐れて武器を取る」とか「なんとなくイジメたくなる」とか「空気」とか。
そんなわけで、ほとんど、ただカオスな人たちを描いただけの小説。
ちなみに、グロさは今時の(と言ってもここ数十年くらいの)小説やらノンフィクションやら映画やらと比べたら全くどうってことない。
北尾トロ 『ほんわか!――本についてわからないこと、ねほりはほり!』 (MF文庫、2008年)
『ダ・ヴィンチ』誌で連載されていた、本に関するちょっとしたエッセイ風のリサーチ報告を加筆・修正したもの。
「読書好きはモテるのか」とか、「官能小説のタイトルは誰が付けるのか」とか、「絶版本は手に入るのか」(ネット普及前の話)とか、「快適な睡眠前の読書術は」とか、本好きにとって興味をそそられるものも多い。
ただ、雑誌の片隅で連載されていただけのものだから、本格的な調査が行われているわけではもちろんない。
結論もありきたりのものばかり。
そんなわけで、同じ趣味の人とその趣味に絡んだ雑談をして暇をつぶすような、そんな感じの本。
個人的には、ニューヨークの本屋事情の話に一番興味をそそられた。 全く知らなくて、多少、希望的な妄想もあるせいで。