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 太田光 『パラレルな世紀への跳躍(集英社文庫、2007年)


 爆笑問題の太田光が徒然なるままに書き綴った短いエッセー(あるいは物語)集。

 イラク戦争、禁煙、サリンジャー、ヒーロー、UFO、いたずら、芸人など、話題はいろいろ。

 主張したり、批評したり、感想を述べたり、回想したり、空想したり、それらが相互に入り乱れていたり、書き方もいろいろ。


 ありもしないことを平然と述べたてるのは太田光の普段のお笑いの手法だけど、つっこみの田中がいない書き物の中では、どこまでが事実でどこからが妄想なのか分からないこともしばしば。 ( この本では、もはやちょっとしたSF短編かと思えるようなものまである。)

 そして、そのあいまいさが現実の世界と空想の世界とをしなやかに行き来させてくれて、読んでいて実に心地がいい。


 また、この本では、最後に結論や主張を述べたり、笑いで落としたりといったのとは異なる、ふっと終わり、余韻を残すようなものが多い。

 そこをとって、期待はずれとか言う向きもあるようだけど、ここまでいろいろ言って何も感じないのはあなたが空っぽなだけだよ、といったところだろう。 あるいは、そんな空っぽで受け身で思考/感性が止まっている人たちに問題意識を感じているのが、太田光だろう。


 テレビやこれまでの本のようにおどけず、リラックスしてストレートに頭の中のことをそのまま書きなぐってい(るように思え)て、太田光(あるいは爆笑問題)による本の中で、出色の一冊。

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 重松清 『あの歌がきこえる(新潮文庫、2009年)


 1970年代から1980年代初めに中国地方の田舎(山口市)で青春時代を過ごした筆者ではなく、シュウと、その親友のヤスオ、コウジの3人の青春の断片を描いた短編集。

 それぞれの話に、その当時を思い出すたびに思い出される歌(ジョン・レノン「starting over」、小田和正「さよなら」、ユーミン「Destiny」など)が、登場する。

 筆者と同世代ではないから、登場する歌を知っていてもあまり青春時代の思い出と結びつかないのは残念だけど、青春時代のあの尖っていて甘酸っぱい心情は時代を超える。

 微妙な心情をすくい取る力量がいかんなく発揮された、重松清らしい作品。


 なんだかんだですっかり重松清にはまってしまっている。 読みやすくて手軽というのが大きい要因でもあるけど。

 キャシー・アッカーやらバロウズやら大江健三郎の初期作品やらを傑作だと感じる自分と、重松清にはまる自分とが矛盾なく共存しているのは紛れもない事実だ。

 重松清 『青春夜明け前(講談社文庫、2009年)


 小5から高校を卒業して上京する直前までの、青春ならではの、バカでダサくてスケベな男子たちを描いた7つの短編を集めたもの。 文庫オリジナル版。

 小5の男子がエロについての知識を知り始め、実際にエロい場面に遭遇する「とんがらし」は、描写や言葉使いが生々しくて強烈。 小学生には読ませたくない感じ。

 嫌いな女子を心底嫌い差別しつつも相手の恋心は尊重したいという様子を描いた「モズクとヒジキと屋上で」、童貞卒業競争をして、ぬけ出したらその武勇伝を誇らしく語る高3の男子たちを描いた「俺の空、くもり」、強がって突っ張っている男たちを、必死でダサイと冷静に見る男子が主人公の「横須賀ベルトを知ってるかい?」が、おもしろかった。


 読みながら、子供時代のことをいろいろ思い出しはしたが、それほど懐かしい思いがしなかったのは、良かれ悪しかれ、今も変わっていないところがあるからなのだろう。きっと。

 重松清 『ナイフ(新潮文庫、2000年)


 学校でのいじめと親と子の関係をテーマにした5つの短篇からなる。

 残虐ではあるが、子供たちには子供たちなりの世界や論理があり、ただ単純に大人の世界の正論をぶつけるだけでは全くダメであるどころか、状況を悪化させかねない、という現実をしっかり認識できているという点では良い。

 けれど、「じゃあどうすればいいのか?」など、その先を描けていない点では物足りない。 結局、この本に出てくるいじめられてる子供たちは、じっと耐えることしか策がない状況に置かれている。

 伊坂幸太郎 『陽気なギャングが地球を回す(祥伝社文庫、2006年)


 平凡なミステリー。

 展開も、仕掛けも、登場人物も、いたって平凡で、あっさり。

 そんなわけで、すらすら読める。

 そして、読後、すいすい忘れる。


 だめだこりゃ。次、行ってみよう。

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