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by ST25
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 クーリエ・ジャポン 2008年6月号・vol.44(講談社、2008年)
 
 
  フランスの週刊誌『クーリエ・アンテルナショナル』と提携し、世界の1500を超えるメディアの中から記事を選び、翻訳・編集 (p11)している雑誌。

 コンビニでちょっと立ち読んでみたらおもしろそうで、しかも値段が思ったより安かった(600円=特別定価)から、初めて買って(きちんと読んで)みた。(存在自体は知ってたけど。)

 他の号は分からないけど、少なくとも今月号は、なかなかおもしろかった。

 主な内容(特集)は、「食料戦争」、「ニューヨークの変化」、「ピュリッツァー賞」、「中国の大気・水汚染」、「世界が見たニッポン」、「ミック・ジャガーとジョン・レノン」と、その他、単発の記事や連載など。

 たくさんの記事の中から選りすぐってるだけあって、さすがに、視野を広げてくれるもの、自分の蒙を啓いてくれるもの、問題の見通しをよくしてくれるもの、好奇心をくすぐってくれるものなどばかりで、情報量も多く、読み応えがある。安易に感情に訴えようとするもの、下衆な俗情に媚びようとするもの、ありきたりな事件記事などはない。

 例えば、アメリカのブッシュ政権がトウモロコシをバイオ燃料として使うようにしたために途上国でトウモロコシを食べられなくなる人が増えたとか、NYのハーレムが高級住宅地化してきて黒人同士が対立しているとか、ガーナで非公認のサッカークラブがサッカー少年たち(と一攫千金を夢見る親たち)を使って“奴隷貿易”をしているとか、幸せを求めて韓国に嫁いだベトナム人女性たちが自殺するなどのトラブルが頻発してるとか。

 世界が見たNIPPONはやはり気になり興味をひかれる特集(毎号あるみたいだけど)である。だけど、カプセルホテルの体験記とか、『女性の品格』の時代錯誤さの批判とか、ネット上で日中韓の若者たちが喧嘩してるとか、どれも古い上に内容も普通すぎておもしろくない。この特集が今号の中で唯一不満なところ。
 
 
 日本のニュース番組や新聞ばかり見ていると、世間(国内ばっか)で起こってること(つまり、ニュース)を知ることの意義は、「常識」を得て世間話についていけるようにすることと、悲しみや怒りの感情を(自分独りで、あるいは、お互い)確認することだと思うようになってたりする。

 でも、本当は、完全に逆なのだ。世間で起こってることを知ることの意義は、自分の偏狭な「常識」や固定観念を打ち破り、安易な感情に流されず理性的に世の中のことを理解することにこそあるのだ。

 なんてことを強く再確認させてくれる有意義な出会いだった。
 

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 森政稔 『変貌する民主主義(ちくま新書、2008年)
 
 
 民主主義をめぐる現在の最新の議論状況(政治理論・政治哲学上の)を1960~70年代の世界(民主主義)の質的変化を起点に一つながりで論じ・紹介している力作。

 中学の「公民」、高校の「政治経済」レベルの民主主義理解をし、民主主義を絶対の正義だと思い込んでいる人たちにこそ是非知ってほしい内容。(著者も「はじめに」でちょっと触れているとおり。)

 なんだけど、それにしては内容・説明が難しい、あるいは、不親切。前提知識があれば何とか本文を補いながら読めるけど、そうでないなら、これだときっと届かない。( この手の分野の本をいくらかは読んだことのある自分も論理のつながりや説明が分からないところはあった。)

 なお、扱われてるのは、大きくは、経済的自由主義と民主主義、差異・アイデンティティと民主主義、ナショナリズム・ポピュリズムと民主主義など。他にも、多元主義的民主主義/利益集団民主主義、討議民主主義、闘技民主主義、新しい市民社会論、ガヴァナンス論、民主主義の主体の問題など、主だったところは大抵(一連の流れの中で)網羅されている。

 民主主義(理論・思想)を教科書的に論じた本というと、アリストテレスだのマキャベリだのルソーだのロックだのといった古典に多くの紙幅を割くものが多いだけに、現代的な論点に絞っている本書は貴重。

 それだけに、やはり広く一般に届かなそうなのは残念。(それとも、入門者でも頑張れば何とかなるだろうか?)
 
 
 細かいところでは、個人的には、民主主義と政治的自由主義(あるいは立憲主義)との緊張関係に関する記述が少なく、その記述も、基本的人権の尊重を定めている近代憲法(日本国憲法)を所与とした、憲法の枠内での棲み分けを言ってるだけというのは不満。その前提となっている憲法を制定する権力や憲法の正統性はどこから来ているのかという問題は重要。( 改憲論議が出てたり、中高校の教科書的な浅薄な民主主義理解が跋扈してる状況なら特に。)
 
 
 まあ、なにはともあれ、これだけ濃厚な議論を展開してる新書なんて久しぶりに見た気がする。のは、きっと、最近ブームな軽すぎる新書群に毒されているからな気がする。


 栗山民也 『演出家の仕事(岩波新書、2007年)
 
 
 新国立劇場演劇研修所の所長であり演出家でもある著者が、これまでの様々な作品や人との交流を通じて獲得してきた、演出するための(あるいは、演劇においての)心構えを、様々なエピソードを交えながら語っている、エッセー風の演出家入門。

 個人的に興味があった、演劇における演出家・脚本家・役者の間の責任や役割に関する(外部からみて感じる)曖昧さという問題に関しては、あまり応えてくれてはいなかった。

 けど、それより、演劇に限らず他の全ての文化・芸術作品も(本来)持っている(はずの)、“内的深さと外的広がり”の存在・可能性を感じ取らせてくれ、演劇に関係・興味のない人が読んでも楽しめるものになっている。
 
 
 演劇に関してのスタンスでは、演出家であれ役者であれ、あらゆるものに対して心を開き、あらゆるものと対話することの重要性が特に強調されている。すごく真っ当なことではあるけれど、言うは易し行うは難し、ではある。ただ、その方法論については、(教科書ではないから)当然ながら、語られていない。
 
 
 また、役者育成法や劇場事情など、外国の演劇事情もたくさん紹介されていて興味深い。質はどうあれ、演劇に対するヨーロッパの観客の“是々非々”なスタンスは羨ましい。
 
 
 こういう視野や問題意識の広い人が作る作品には興味をそそられる。( 現実はそんなに甘くはなかったり(=作品はつまらなかったり)するものだけど。)


 橋爪大三郎 『橋爪大三郎の社会学講義(ちくま学芸文庫、2008年)
 
 
 同名の単行本の『1』と『2』の中から、社会学、大学、家族、宗教に関するものを集めて文庫化した新編集版。

 「社会学講義」というタイトルだけど、原論というよりは(現実の問題への)応用が中心。(けっこう俗っぽい)一般向けの雑誌に90年代前半に収録されていたものが多く、中身は玉石混交だから、長くなるけど個別に見ていこう。
 
 
 最初の「基礎講座」の、社会学についての概説は、ひどい。社会学の存在や存在意義を必死になって主張しようとしている(が外している)感じ。そもそも社会学とはどういう学問かを説明するのに、「 政治学でも経済学でも法学でもない分野を研究する学問 」というような消極的な定義しか与えられていない。その上、社会学の成果として挙げられるのがコントだのスペンサーだのウェーバーだの古い人ばかりだったりする。その苦し紛れで、ついにはこんなことまで言っている。

政治学にどっぷり漬かっているかぎり、政治学では見えてこないことがいっぱいある。たとえば人権のシステムがいいと言うけれども、では在日外国人の扱いはどうするんだとか、選挙区はこうだけれども、一票の格差や地方自治はどうするのかとか、そのなかで議論しきれないことはたくさんある。それらは社会学が指摘すべき問題である。 (p50)

中国は、マルクス主義、毛沢東思想を中核にするイデオロギー国家だった。しかしトウ?小平が登場し、経済システムを政治システムと別個に動かそうというアイディアが生まれる。ここで、社会学の復活が必要になった。経済システムを自立的に動かそうと言っても、社会主義体制の副産物として、官僚主義やコネの横行など、さまざまな社会問題が山積している。それらを取り除き、市場経済を機能させるためには、問題の発見が必要になる。それにはやはり、社会学の力を借りなければならない。 (p51)

 そもそもこれらを社会学の仕事だとする見立て自体が意味不明だけど、この文章が書かれて15年経った今から見ると、これらの問題に取り組んだのは、(当然ながら)社会学ではなく、政治学や経済学(あるいは、両者が混ざった政治経済学)や法学であった。
 
 
 次に「講座1」の大学について。90年代前半に書かれたものだけど、これは今現在の大学改革( 国立大学の民営化とか英語の共通語化とか奨学金の充実とか )を完全に見越していて、その先見の明は見事。( というか、これ以外の様々なところで展開されていた著者の主張が昨今の改革に影響を与えている部分もあるかもしれない。) 逆に言えば、今となっては常識化していて歴史的な意味しかない部分もあるけれど、今日目指されている方向性の一つの原理的主張としての価値はある。
 
 
 次に「講座2」の家族的なものについて。最初に結婚について。

人類はなぜ結婚するのか、という問題ですが、結論を言うと、それは、結婚という制度がなくなってしまったら、困る人が大勢いるからです。 (p156)

 なんていう、頭の悪い(トートロジーで何も言ってない)文がいきなり出てきて読む気が失せるけど、それを我慢して読み続けてもこのレベルの怪しげな話ばかりでダメ。2つほど例示しておこう。

結婚を、恋愛と比較するとわかりやすいと思うけれど、恋愛のチャンスというのは、非常に不平等です。それに対して、逆説的で皮肉にきこえるかもしれないけれど、結婚のチャンスは、恋愛のチャンスに比べると、ずっと平等である。日本で言えば、実に9割以上の人が、結婚するという現実がある。自発的な意思で結婚していない人もかなりいますから、この数字は、望めば、ほとんどすべての人は結婚できるということを表している。こんなに平等なことはないんです。 (p164)

恋愛のチャンスが、じつに不平等である理由は、自分が支出する時間が、全生涯に亘らなくて、断片的でいいからです。そこで、巧妙に立ち回れば、次々に恋愛することもできるし、同時に何人とも恋愛することが可能だ。けれど、結婚でそれをするのは、時間の構造から言って無理なのです。これはマッチングゲームですが、すでに結婚している人を結婚の対象に選べないというルールを定めると、おおむね結婚は平等にならざるをえないということがわかります。恋愛の場合、とび抜けて優れた能力を持っている人や、きれいな人に人気が集中しやすいけれど、結婚のほうは、ある程度現実的にならざるを得ないから、ほぼすべての人が、だいたい分相応の人と一緒になれる。 (p166)

 色々問題はあるけど、1つだけ指摘するなら、「平等」とは言っても、相当無理して妥協しての産物だとやはりみんな嫌がるということは、歴史が証明してくれた。(未婚率は年々上昇している。)

 それから、家族について。 かつての温かく安らぎに満ちた家族の関係 (p184)が、ただの錯覚の固定観念にすぎないことを歴史的・社会学的に明らかにしている。広田照幸の議論と近い。

 そして、猥褻と道徳について。猥褻物の規制についてのイギリスの5原則を参照にしながら、国家が社会の領域に介入し、刑法(わいせつ物頒布罪)によって道徳を守ろうとすることを批判している。ネット上での性的表現の対処が問題になっている中、改めて原理的に考える基礎を提供していて非常にアクチュアルで有益。
 
 
 最後に、「講座3」の宗教について。最初の宗教原論的な文章では、宗教の機能と、(ハンチントンの議論に触発されてか、)途上国が宗教上の教義から先進国に暴力的な行動を起こす危惧が語られている。これが当たっているかどうかは、まだまだこれから。

 次の2つの文章では、仏教についての宗教社会学的な観点からオウム真理教が分析されている。もちろん、オウムの公的な教義や組織だけを見ていては不十分なところがあるとはいえ、これはおもしろい。(意外に知らない)オウムがあんな事件を犯した教義上の動機や、「世界最終戦争を唱える仏教教団」がどれだけおかしいかといったことを教えてくれる。
 
 
 全体としては、ナイーブな議論が気にならない人は楽しめるかもしれない(それはいいのか?)けど、そうでない人にとっては、有益なものもあるとはいえ、(全体では)きついかもしれない。

 政府の教育再生懇談会が小中生の携帯所持禁止を提言するというニュースを聞いて、所持禁止の法制化をするとか積極的に所持禁止を啓発していくとかいうわけじゃないなら、そんな、あんたたちの子育て方針を表明されても、ただの無意味な自己満じゃないか、と思ってたんだけど、ところで、この「教育再生懇談会」って何?安倍さんが作った「教育再生会議」と違うの?ってのが気になって調べたら、教育再生懇談会は、教育再生会議の提言のフォローアップを行うところらしいってことが分かった。

 で、ついでにリンクされてる「設置根拠」だの「構成員」だの「開催状況」だのを適当に見てたら、「配布資料」(4月17日の)があって、その中に今回の「携帯所持禁止を提言」って結論につながりがあると思われる有害情報対策をめぐる状況(PDF)ってのがあったから軽く見てたら、ちょっと色々おもしろかったからちょっと色々見ていこうと思う・・・。
 
 
 2ページ。前提的な有益な情報。文科省調べ(平成19年)による携帯電話の所有率。「中学3年生:60.1%、小学6年生:28.1%」。

 4ページ。auのフィルタリングサービスが紹介されてる。1つは予め「健全」認定を受けたサイト(往々にしてauが運営・関与してるサイトばかりだったりする)のみ閲覧できるもの。もう1つは基本は全て閲覧可能だけど、「カテゴリ」によって閲覧制限を課すもの。で、その制限されるカテゴリなんだけど、「アダルト」とか「出会い」は分かる。けど、SNS・ブログを含む「コミュニケーション」、「主張一般」を含む「主張」が制限されるってのはどうなんだろう? 特に「主張一般」って「有害」なの? なら、やっぱ新聞の社説は有害だよね?(そうは思うけど、あくまで皮肉を込めてだよ。) そしてもちろん、教育再生懇談会の提言も有害だよね? ていうか、ブログとかSNSとかも制限したら他に何が残るの?(てか、「しょこたん☆ぶろぐ」とか見れないの!?) 今後、ますます携帯はパソコンに近づいていきそうな情勢の中で。 まあ、逆に言えば、現在のフィルタリング技術(最近妙に期待だけが膨らんでる)なんてこの程度のものだってことだ。

 5ページ。民間調査会社が行った中高生へのアンケート調査(N=394)の結果が紹介されている。SNSやブログなどのコミュニケーション系コンテンツが利用できなくなると、「かなり困る」が45.7%、「少し困る」が31.8%。そして、フィルタリングされたら、「親に頼んで解除手続きをしてもらう」が51.8%、「解除してもらいたいが我慢する」が16.2%、「安心して使える」が6.3%、「わからない」が23.6%。で、「解除してもらう」を選んだうち、「親が許してくれると思う」と答えたのは60.3%。ここから、この資料では、フィルタリングを解除しケータイを利用する割合は全体で3割程度となると結論し、この文を黄色の背景で装飾してまで強調している。が、待て、バカ者よ。「わからない」が23.6%もいるではないか。この人たちがみんな解除を親に頼んで同じく6割が許されたら、利用者は45%になるぞ。その上、「使いたいけど我慢する」派がとりあえず親に頼んで同じく6割が許されたとしたら、利用者は56%になるぞ。コミュニケーション系コンテンツなら「友達がやってるから自分も」となる確率は高いぞ。なんせ、そもそも制限を支持してる“優等生”は6.3%しかいないのだし。

 7ページ。「出会い系サイトを利用した児童の犯罪被害」の件数についてのデータが載ってる。このデータの出典はどこ? 「児童」ってことは(いきなり)小学生だけ? (いきなり)パソコンも含めてるの? よく分からない。で、数字は、2002年1273件、2003年1278件、2004年1085件、2005年1061件、2006年1153件、2007年1100件となっている。ここから、この資料では、(出会い系サイト規制)法施行後いったん減少するも平成18年(2006年)以降再び増加傾向と結論付けてるんだけど、待て待て、バカ者。確かに2005年から2006年になって増えてるけど、2007年ではまた減少してるじゃないか。なのに、なんで「増加傾向」って言えるんだよ? それに、だいたい、児童全体からすれば0.1%にも満たない数での増加なんて誤差の範囲だって考えたりしなかったの? 統計についての入門書とか、1冊も読んだことないの? さらに、年少者の人口は年々減少傾向にあるんだよ?(つまり全児童中の被害者割合で言えば、年々、より減ってることになる。) さらにさらに、携帯(・パソコン)の普及率の増加という要因も考慮しないとダメでしょう。ベネッセの2004年の調査によると、2004年時点での小学6年生(N=1347)の携帯普及率は22.0%で、前述の文科省の2007年の調査(28.1%)より少なかった。(これも被害割合で言えばより減ってる方向へ傾かせる。) ちなみに、このベネッセの調査、サンプル数も十分な上、地域別(大都市部、都市部、郡部)とか成績別(上・中・下)とかに分けて携帯普及率とか携帯・パソコンの用途( 「会ったことがない人と電話やメールでやりとりをすること」なんてのもある!)とかを分析していて、よっぽど参考になる。

 8ページ。「携帯電話の子供にもたらす弊害」として警察庁の研究会の報告書が抜粋されている。『こだわりの美巨乳天国』なるDVDのパッケージ写真が(サイズは小さ目だけど)載ってる。

 9~10ページ。引き続き、警察庁の報告書を引きながら、「子どもが非行・犯罪を犯したり、犯罪に巻き込まれる危険性が高まっていること」の例が色々紹介されている。「例」と言いながら一般化したような言い方が目立つ。そして、その割りに因果関係の論証がなく、携帯登場以前からあった話や(どの時代にもいる)一部の大人にもあてはまる話が多い。例えばこれ。 子どもたちが、性暴力を肯定する描写に触れ、「皆やっている」、「被害者も喜んでいる」等と認識し、現実世界で犯罪を犯すこと 。 それから、子どもの被害例も紹介されているけど、これなんて携帯がそんなに関係あるのだろうか? 15歳の女子は、遊ぶ金が欲しかったことや、売春客とトラブルが発生してもバックがいるので安心だと思ったことから援助交際を敢行しているグループに参加した。同グループでは、大学生の男が出会い系サイトに援助交際を誘引する書き込みを掲示する方法で多数の売春客を募るとともに、各人の分け前を増やそうとしたため、同女は1ヶ月の間に約80人の者との売春を強いられた。 ちなみに、どちらの例も一番上に紹介されている、携帯の弊害として(おそらく)典型的と思われている(であろう)例である。

 最後の11ページ。いわゆる学校裏サイトについての文科省の調査結果が載っている。結果を見ると、調査対象の全裏サイト中、「キモイ」「うざい」等の誹謗・中傷の32語が含まれるサイトは50%、性器の俗称などわいせつな12語が含まれるサイトは37%、「死ね」「殺す」「消えろ」等暴力を誘発する20語が含まれるサイトは27%、となっている。簡単に調査できる(ほとんど公の)サイトを対象にした、この荒っぽい調査( 「 死ねとか書いてる裏サイトもあるんだって、やだね 」と書き込んであっても“暴力を誘発するサイト”に含まれてしまう )を見た限りでは、「学校裏サイト」とかいう偏見を帯びた名前で呼ばれるサイトが、なんでもかんでも感情垂れ流しでイジメの温床になっているわけではないことが分かる。
 
 
 疲れたけど、この資料をもとにどのような議論(会話)が行われたのかも見ておこう。(4月17日の議事の18ページから)

 まず、上で検討した(すかすかの)資料をもとに、官僚がやたらと危機や不安を煽るような説明をする。もちろん、携帯のメリットについての言及はなし。

 続いて、PTA全国協議会の会長さんが、子どもの教育の一義的な責任は親にあるけど、親は無知だから、フィルタリングを義務化すべしという意見を述べる。

 続いて、4月から子どもが小学校に通い始めた篠原のおじさんが発言。うちの子が通ってる小学校は(高校まで一貫して)携帯禁止なんだけど、この間、火事で中央線が止まったとき、それにうちの子が乗ってて、連絡が取れなくて不安だったですよ。ここ2~3日、子どもはパパ携帯を買ってと言ってくるし、どうしようかと、今週末、子どもとまた話し合うことになってるんですよ。そんなわけで、 (フィルタリング)以前の問題として、子供に携帯を持たせることの是非をまず論じるべきだと思います。個人的には、メールもできません、サイトも見られません、ただ家や学校との連絡のお話だけはできますよというような子供用の携帯電話を普及させられないものかと考えています。  すごいね。完全に自分の事情に合わせただけの主張をしてるよ。“肝を冷やす”とはまさにこのこと。ちなみに、この「有識者」として参加しているおじさんの肩書きはジャーナリスト。

 で、この篠原のおじさんの発言を受けて、木場のおばさんが話し始める。 篠原さんの携帯を持たないという意見、私も(フィルタリング義務化論とあわせて)どちらにも賛成で、自分も中学生の息子には持たせておりません。  ちょっ、ちょっと、待て・・・。篠原のおじさん、「携帯持たない」なんて言ってないぞ・・・。機能制限のある携帯を「持たせたい」って言ってるぞ・・・。カオス・・・。ちなみに、この「有識者」として参加している木場のおばさんの肩書きはキャスター&千葉大特命教授。

 てなあたりで議長が議論を引き取り、出席してる大臣先生方に話を向ける。そこで、国民に圧倒的に不人気な総理はなんと言ったのか、聞いてみよう。

  篠原委員の方から携帯を持つべきかどうかという、そういう問題提起がありましたけれども、是非お嬢さんに携帯持たないで頑張るように日曜日は説得してほしいと思います。
 (中略)
 携帯のフィルタリングの普及という議論の前に、携帯を持つべきかどうかということについて1回議論していただいた方がいいと思いますよ。ろくなことないんですから、このことで。 (中略) 携帯を持つことによって、実際に会って話をすることが少なくなり、人間関係の形成にマイナスになったり、教育的に言ってもマイナス面が大きいと思いますよ。(以下略)

 てなわけで、子供の犯罪被害云々より、人間形成云々という(いきなり初めて出てきた)総理の思い込みが、来月の(つまり昨日の)「携帯所持禁止を提言」というニュースにつながっていったわけである。

 アーメン。

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