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 平野啓一郎 『小説の読み方――感想が語れる着眼点(PHP新書、2009年)


 小説を分析する視点をいくつか提示し、それを用いていくつかの作品を解剖している本。

 提示されている視点は、「究極の述語への旅」、「期待と裏切り」、「述語に取り込まれる主語」など。

 解剖されている作品は、オースター『幽霊たち』、綿矢りさ『蹴りたい背中』、エリアーデ「若さなき若さ」、古井由吉『辻』、伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』、美嘉『恋空』など9作品。


 提示されている視点は、まとまりがなく雑然としている気がするけど、「ああなるほど」と思うものもあるし、「そんなの誰でも気づくだろう」というものもある。 それから、さすがは小説家だけあって、「究極の述語」とか「述語に取り込まれる主語」とかいう表現は上手い。

 ただ、最大の問題は、この本を読んでもその中で解剖されている小説を読みたいという気にならないこと。( あるいは、一度読んだ小説の新たな魅力に気づくことがないこと。ちなみに、オースター、綿矢、エリアーデは既読だった。) これは、逆から言えば、ここで提示されている視点では小説のおもしろさを伝えることはできないということを物語っている。

 この本の副題は「感想が語れる着眼点」だけど、「小説を(小難しく)分析すること」と「読み終わった後の感想を表現すること」とは、まったくの別物だ。 残念ながら。 文学者がちゃんと働いてこなかったから。

 この本が行っているのは、前者の「小難しい分析」でしかない。

 思えば、エリアーデを「個人的に好き」という、芥川賞を受賞するようなプロの小説家が、そもそも『蹴りたい背中』とか『恋空』とかを本当におもしろいと思っているのだろうか? もし、思っていなくて、批判してやろうとも思っていないのなら、何も伝わらないのは当たり前だ。

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 重松清 『くちぶえ番長(新潮文庫、2007年)


 普通の弱い小4の男の子ツヨシと、転校早々「番長になる」と自分から宣言した強くて優しい女の子マコトの、一年間の話。

 うれしいとか、悲しいとか、怖いとか、はずかしいとか、痛いとか、かっこいいとか、好きとか、悔しいとか・・・・・、人間にとって基本中の基本のいろいろな気持ちをシンプルに表現してくれている。

 小説入門として、人間というものの教科書として、子供に何度も読ませたくなるような良作。

 アンドルー・クルミー 『ミスター・ミー(青木純子訳/東京創元社、2008年)


 『百科全書』やルソーの『告白』を軸に、時と場を隔てた3つの話が相互にシンクロしながら進行していく、なんとも不思議な物語。

 博識ながら抜けたところがある登場人物たちが作り出す雰囲気や世界がとても心地よく、そこにストーリーや知的な話が加えられていて、楽しい。

 四方を本に囲まれた書斎で、裸で本を読む女性が映っているパソコン画面を眺めている一人の老人が描かれている表紙の絵と、謎の書物、ロジエの『百科全書』とは? 書痴老人がネットの海に乗り出した・・・・。という帯の宣伝文句に惹かれて読んでみたが、珍しく、そういった周辺情報から沸き起こる期待にたがわない内容・雰囲気を持つ本だった。

 デュマ・フィス 『椿姫(新庄嘉章訳/新潮文庫、1950年)


 美しい娼婦と純粋な青年との間の恋愛を描いた1848年の小説。

 庄司薫の小説に(好意的に)出てきているのを見て、いつかは読みたいと思っていたもの。


 純粋な青年アルマンは、純粋に恋心を抱き、その純粋さゆえに最高の幸せをつかみかける。 しかし、恋心のあまりの強さと純粋さのために、(猜疑心、嫉妬など)恋の罠にはまってしまい、醜悪な人間になってしまう。

 一方、その美貌と娼婦という立場を利用して、浮き名を流し、派手な生活を送っていたマルグリットは、純粋な愛情を初めて受け、それまでの生活を一変させ、精神性をも高めていく。

 そんな対照的な結果になってしまう2人のすれ違いぶりや、相当な悲惨な仕打ちにも堪え得るまでに高められたマルグリットの高貴な精神性が心を打つ。

 好きなあまり、疑い、妬み、傷つけてしまう恋のつらさ、相手の幸せを第一に考えるという本当の愛情。

 そんな普遍的な恋愛を描いた恋愛小説の古典。


 それだけに、やや退屈な感じもしてしまうのだけど。

 13デイズ(監督:ロジャー・ドナルドソン/出演:ケヴィン・コスナーほか/日本ヘラルド映画)


 1962年のキューバ危機を描いた映画。

 久しぶりに鑑賞。

 一時の感情に身を任せることは簡単だし、その誘惑はしばしば強いものだが、そこで理性的であることが責任ある者には要求される。 そして、理性的であるためには強靭な精神や忍耐が必要とされる。

 この映画では、その強靭な精神や忍耐が勝利をおさめるまでを描いている。

 ただ、その精神を維持し、忍耐するのに、仲間がいるところが、作品的にはやや緊迫感を下げてしまっている。 (ケネディ兄弟+補佐官の3人で耐えている。)

 が、もちろん、事実を基にしているのでそこはやむを得ないところ。

 それから、敵であるソ連やキューバについて全く描いていないのは、「一方的」と批判するべきところでは断じてなく、対立する国と国との間の意思疎通や平和維持の孤独感や難しさを伝えてくれてグッド。


 それにしても、アメリカ映画はホントに幸せな家族模様を入れるのが好きだなぁと思う。 ただ、作品を安っぽくしてるだけだと思うんだけど・・・・。

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