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 ジョセフ・E・スティグリッツ『スティグリッツ 公共経済学(上) (藪下史郎訳/東洋経済新報社、1996年)
 
 
 すでに第2版が出ているみたいだけど、これは第1版。少し前に古本屋で105円で購入した。

 最近興味を持っている公共選択の章があったからそこだけ読んでみた。(「第5章 公共選択」と「第6章 公的生産と官僚制度」)

 あくまで公共経済学・財政学の教科書だから、公共選択論については基本的なところが簡単に押さえられているだけ。

 だけど、公共選択論の「入り」としてはとても分かりやすい。

 というのも、最初に「資源配分の私的メカニズムの効率性」を押さえた上で、そこから逸脱した非効率なものとして「資源配分の公的メカニズム」が位置付けられ語られているから。

 具体的には、市場とは違う公的な資源配分メカニズムとして、多数決投票、中位投票者、投票のパラドックスといった公共選択論の概念が、市場による資源配分との違いを意識しながら説明されている。

 そのため、経済学と政治学(的対象)との接合が自然になされているように感じることができた。

 これが普通なのかもしれないが、いかんせん先に政治学者の書いたもの(小林良彰『公共選択』)を読んだから、経済学的な方法を使って政治的現象を分析することの意義を理解し損ねていたような感じである。

 やはり、政治学ではなく、経済学との関係において語られないと、公共選択論はあまり意味がないようである。

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 中島隆信『これも経済学だ!(ちくま新書、2006年)
 
 
 伝統文化、宗教、障害者という一風変わった対象を経済学的に見てみる本。

 経済学的な思考法を色々な分野に当てはめてみるという類書はたくさんあるけど、その中でも間違いなくおもしろい部類に入る。

 まず、経済学的な概念や理論を前面に押し出していないから、アンチ経済学な人でも違和感なく読める(と思う)。

 それに、伝統文化、宗教、障害者に関して言ってる内容も、当たり前のことを経済学的に言ってみただけでなく、それ自体としても新鮮で興味深いものになっている。
 
 
 個人的に特におもしろかったのは、宗教の話をしている第3章。興味深い指摘はいくつもあるけど、例えば次の話。

(江戸時代以来の、幕府によって創られた独占的な檀家制度のために、)お寺と檀家は、仏教信仰というよりもむしろ先祖代々の墓を媒介として強固なつながりを維持してきたのである。
 (中略)
 仏教寺院は檀家制度のもとで長年にわたって太平の世を謳歌したため、信仰を広め信者を獲得するという宗教が本来磨きをかけておかなければならない技術を失っていたのである。そのため、都会に出てきた多くの元檀家をつかみ損ね、猛烈な信者獲得攻勢をかけた創価学会などに市場を席巻される結果を招いた。 (pp105-106)

 主張が詳細なデータによって確かめられているわけではない。だけど、政府(幕府)の規制が創った独占的で競争のない市場の帰結が、――つまり経済学的な論理の一つが――、鮮やかに語られている。それでいて、内容も知的好奇心を満たしてくれておもしろい。
 
 
 そんなわけで、この本は、正しい/まともなことなのに多くの人に理解されていないことをおもしろく書いている“新書の理念型”のような一冊と言える。

 岩田規久男『金融入門[新版](岩波新書、1999年)
 
 
 貨幣、金融機関、金利、デリバティブ、金融と景気、金融政策など、金融に関するあらゆるトピックを分かりやすく説明している本。

 
 
 1990年代以降のデフレ不況は、(確か、)貨幣的現象であるため、財政政策はあまり効果がなく、金融政策が重要だと言われる。そのため、日銀の政策に注目が集まる。

 日銀の政策といえば、学校で習うがために有名なのは「公定歩合」である。しかし、今では金利の操作で「公定歩合」はあまり重要ではなく、日銀はこの言葉をお蔵入りさせるべく頑張ってさえいる。そして、その代わりによく出てくるのが、「無担保コール翌日物(オーバーナイト物)」あるいは「短期金融市場翌日物」である。

 日銀のゼロ金利政策の解除を「焦りすぎだ」と考えつつも、実は、この「無担保コール翌日物」とやらのメカニズムをなんとなくでしか理解していなかった。

 今回、この本を読んだ最大の動機はここにあった。
 
 
 それで、読んだ結果、よく分かった。

 特に、89頁に載っている「金融市場の分類」という図4-2は、金融関係の本自体が初めてということもあって、初めて目にする代物で、理解が促された。「コール」とやらがどこに位置付けられているかを辿っていけば、以下のようになる。
 
 
 まず、金融市場は、短期金融市場と資本市場(株や公債・社債)に分かれる。そのうち短期金融市場は、銀行間市場と他にも開放されている市場とに分かれる。そして、銀行間市場が、手形売買市場とコール市場とに分かれている。

 つまり、「コール」あるいは「コール市場」とは、各銀行が持っていて日銀に預けている預金のようなものである日銀当座預金に関して、余裕のある銀行から増やしたい銀行へと短期的に貸し借りする際の市場のことである。

 なお、「無担保コール翌日物」の「無担保」とは文字通り担保を必要としないということで、「翌日物」とは取引期間が翌日までということである。

 この「コール市場」の金利は、当然、日銀が供給する資金の量によって変わる。だからこそ、日銀が金利誘導政策の目標として、この「無担保コール翌日物」を使うことができるのである。
 
 
 「なぜこの無担保コール翌日物が日銀の金利誘導政策の目標として使われているのか?」に関しては、書いてあったような書いてなかったような、という感じでよく分からない。

 けれど、とりあえずは、「無担保コール翌日物」のメカニズムと位置付けが分かっただけで満足である。

 真野俊樹 『入門 医療経済学(中公新書、2006年)
 
 
 医療関係者に向けて書かれた(ような感じの)医療経済学の入門書。

 前半で経済学の基礎や理論を紹介し、後半で医療に関する問題や論点の紹介を経済学的に(?)行っている。

 紹介される経済学の理論や概念は、需要と供給、市場の失敗、外部性といった初歩的なものから、厚生経済学、制度派経済学、ゲーム理論、組織の経済学まで実に幅広い。

 というか、広げすぎたがための問題点がいろいろと出てしまっている気がする。個々の説明が短すぎるとか、医療の問題に応用しきれていないとか。医療関係者という経済学の全くの初心者向けに書かれたのなら、もっと絞るべきだったと思わずにはいられない。

 後半の具体的な医療の問題に関する記述は、「(医療経済学って)こんなもんなのかなぁ」という感じがしてしまった。巷で社会問題の議論として普通に行われている医療や福祉の議論と大差ないような印象だったから。
 
 
 そんなわけで、経済学入門と医療問題入門という感じの内容なわけで、自分には特に目新しさはなかった。

 中原伸之 『日銀はだれのものか(聞き手・構成:藤井良広/中央公論新社、2006年)
 
 
 東燃ゼネラル石油の社長、会長などを経て、1998年4月から2002年3月まで日銀政策委員会審議委員を務めた著者による日銀時代を振り返っての回顧録。

 著者は審議委員の間、常に正確に日本経済の状況を見通し、一貫して早くからリフレ政策(ゼロ金利、量的緩和など)を主張・提案し続けている。常に、状況が悪化するまでは委員会で1対8で否決され続けたが。

 経済学理論とデータに裏打ちされた著者の(少なくとも審議委員だった期間の)経済分析は神がかり的なものがある。この人が総裁だったら、「日本のグリーンスパン」と呼ばれて国際的に名声を得ていたかもしれない。

 それに比べて、日銀総裁、2人の副総裁、他の審議委員、日銀幹部たちの行動の滑稽なこと・・・。

 日本経済の状況は見誤る、処方箋は遅れる、失敗を認めない、責任を自覚しない、責任を取らない、説明責任も果たさない、「独立性」の認識を誤る、etc・・・。

 この本を読むと、(政策委員や総裁や幹部などを含む)日銀の行動原理をよく知ることができる。

 かなり簡単に抽象化すれば、公僕であることを忘れた小役人集団ということになるだろう。

 日銀の責任の明確化や「独立性」の明確化のために、著者が主張しているように、政策の“目標”(インフレ目標など)は立法府が日銀に与え、その目標を達成する“方法”に関しては日銀自身の判断で行えるようにするというシステムが良いかもしれない。
 
 
 いずれにしても、この本は、日本経済、経済分析力の涵養、日銀、金融政策など、多面的に学ぶことができる面白い本である。

 分析・処方箋を見誤った審議委員たちの敗者の言い分も是非聞いてみたい。というか、国民に対する説明責任をしっかりと果たすべきだ。

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