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中原伸之 『日銀はだれのものか』 (聞き手・構成:藤井良広/中央公論新社、2006年)
東燃ゼネラル石油の社長、会長などを経て、1998年4月から2002年3月まで日銀政策委員会審議委員を務めた著者による日銀時代を振り返っての回顧録。
著者は審議委員の間、常に正確に日本経済の状況を見通し、一貫して早くからリフレ政策(ゼロ金利、量的緩和など)を主張・提案し続けている。常に、状況が悪化するまでは委員会で1対8で否決され続けたが。
経済学理論とデータに裏打ちされた著者の(少なくとも審議委員だった期間の)経済分析は神がかり的なものがある。この人が総裁だったら、「日本のグリーンスパン」と呼ばれて国際的に名声を得ていたかもしれない。
それに比べて、日銀総裁、2人の副総裁、他の審議委員、日銀幹部たちの行動の滑稽なこと・・・。
日本経済の状況は見誤る、処方箋は遅れる、失敗を認めない、責任を自覚しない、責任を取らない、説明責任も果たさない、「独立性」の認識を誤る、etc・・・。
この本を読むと、(政策委員や総裁や幹部などを含む)日銀の行動原理をよく知ることができる。
かなり簡単に抽象化すれば、公僕であることを忘れた小役人集団ということになるだろう。
日銀の責任の明確化や「独立性」の明確化のために、著者が主張しているように、政策の“目標”(インフレ目標など)は立法府が日銀に与え、その目標を達成する“方法”に関しては日銀自身の判断で行えるようにするというシステムが良いかもしれない。
いずれにしても、この本は、日本経済、経済分析力の涵養、日銀、金融政策など、多面的に学ぶことができる面白い本である。
分析・処方箋を見誤った審議委員たちの敗者の言い分も是非聞いてみたい。というか、国民に対する説明責任をしっかりと果たすべきだ。