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 中島隆信『これも経済学だ!(ちくま新書、2006年)
 
 
 伝統文化、宗教、障害者という一風変わった対象を経済学的に見てみる本。

 経済学的な思考法を色々な分野に当てはめてみるという類書はたくさんあるけど、その中でも間違いなくおもしろい部類に入る。

 まず、経済学的な概念や理論を前面に押し出していないから、アンチ経済学な人でも違和感なく読める(と思う)。

 それに、伝統文化、宗教、障害者に関して言ってる内容も、当たり前のことを経済学的に言ってみただけでなく、それ自体としても新鮮で興味深いものになっている。
 
 
 個人的に特におもしろかったのは、宗教の話をしている第3章。興味深い指摘はいくつもあるけど、例えば次の話。

(江戸時代以来の、幕府によって創られた独占的な檀家制度のために、)お寺と檀家は、仏教信仰というよりもむしろ先祖代々の墓を媒介として強固なつながりを維持してきたのである。
 (中略)
 仏教寺院は檀家制度のもとで長年にわたって太平の世を謳歌したため、信仰を広め信者を獲得するという宗教が本来磨きをかけておかなければならない技術を失っていたのである。そのため、都会に出てきた多くの元檀家をつかみ損ね、猛烈な信者獲得攻勢をかけた創価学会などに市場を席巻される結果を招いた。 (pp105-106)

 主張が詳細なデータによって確かめられているわけではない。だけど、政府(幕府)の規制が創った独占的で競争のない市場の帰結が、――つまり経済学的な論理の一つが――、鮮やかに語られている。それでいて、内容も知的好奇心を満たしてくれておもしろい。
 
 
 そんなわけで、この本は、正しい/まともなことなのに多くの人に理解されていないことをおもしろく書いている“新書の理念型”のような一冊と言える。

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