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梶井厚志 『戦略的思考の技術――ゲーム理論を実践する』 (中公新書、2002年)
ゲーム理論的な思考法を普通の言葉で説明しているゲーム理論の初級向け入門書。
2章と3章は利得表とかツリーとかが出てきてゲーム理論っぽいけど、他の章は、インセンティブ、コミットメント、ロックインなどの重要な概念を卑近な例を用いて普通の言葉で説明がされている。
ゲーム理論を全く知らない人が読むと、ゲーム理論というもののイメージをつかめて有用だと思う。
また、副題の通り、ゲーム理論的な思考法(戦略的思考)を実生活で、意識的に活かすとこうなるということもよく分かる。
ただ、若干長くてくどい。(新書なのに274ページもある。)
しかも、2~3章の内容より4~11章の内容の方が簡単だから、なんか気が抜ける感じ。
いや、でも、文章は分かりやすいし、おもしろい話も混ぜてあるし、良書であることには違いないけど。
塙花澄さん出演の映画『HERO』の感想、本来こちらからトラバすべきところ、ネタバレがあるためにトラバするのを控えていたら、記事に取り上げて頂いてしまいました!
本当にありがたい限りです。
そんな優しい塙さんが、ブログでも映画でも出し惜しんでいる声を生で発する舞台には、「お金で買えない価値がある。」の声の方も出られるようです。
これは、聞き逃せません。
塙さんの導きによってお越し頂きました方も、ありがとうございます。
『ペテン師と詐欺師』 (演出:宮田慶子/出演:鹿賀丈史、市村正親、奥菜恵ほか/場所:天王洲銀河劇場)
雨風が凄まじかった10月6日(金)に観に行ったミュージカル。
年を越す前に感想を。
イギリス紳士風の詐欺師(鹿賀丈史)と粗野なアメリカ人ペテン師(市村正親)が純情な旅行者(奥菜恵)をターゲットに(ナンパの)勝負を繰り広げるコメディ・ミュージカル。
致命的につまらなかった。
金(12,600円)を返して欲しいと思った。
あなたたちはプロですか?と聞きたかった。
何が酷かったか?
脚本と演出と演技が酷かった。
具体的には、まず、ストーリーが大した展開もなく平坦だった。
その上、ベタな笑いをベタと気付かずに乱発するから、良い意味で期待を裏切ることがなかった。
(先を)読んだとおりに話が進んでいくから、笑えるポイントがほとんどなかった。
演技と演出に関して。
確かに、鹿賀丈史はダンディだったし、市村正親はコミカルだった。
だけど、イギリス紳士にも、アメリカ人にも見えなかった。ただの日本人だった。
奥菜恵は本人の素のキャラクターと役柄が合ってない上に、その差を縮めるだけの演技力もなく、結局、役柄ではなく「奥菜恵」がしゃべってるだけだった。
平田オリザの『演技と演出』でも読んで、“コンテクスト”について自覚する必要がある。(役者も演出家も。)
それから、ただでさえ沈んでいた自分の気持ちをさらに逆撫でたのが、誰の女性ファンがやり始めたのか知らないけど、不自然に起こったスタンディング・オベーション。
客席の空気からしても、拡がり方の遅さからしても、かなり不自然だった。
この観客にして、この駄作あり、か。
『HERO』 (監督:田村祥宏/出演:小原雄平、道井良樹、塙花澄ほか/制作:DENDROBIUM/UPLINK X @渋谷)
このブログをブログで取り上げて頂いたり、このブログにコメントして頂いたりしている塙花澄さんが出演されている映画『HERO』を金曜日に観てきた。
「UPLINK X」という小さな劇場は、最近増えてきた近代的なシネコンとは対照的な、学校の視聴覚室のようなちょっと懐かしい雰囲気。
でも、逆に、それが気分をリラックスさせてくれる。しかも、今回の映画の雰囲気と妙にマッチしている。混んでなければこんな劇場も悪くない。
そんな今回の映画の(自分が理解した or 注目した)ストーリーはこんな感じ。(以下、映画の内容・結末に踏み込んで書いている。)
一方に、善悪の感情のない新人類を創ろうとする組織と、その末端で「怪人」と呼ばれる新人類の失敗作を処分する新人類(小原雄平)がいる。
他方に、口を利けない妻(塙花澄)といじめにあっている息子を持つ父親(道井良樹)がいる。彼は親から引き継いだ多額の借金を抱え、仕事もうまくいかず、苦しい境遇にある。そして、ついには家族を想い自分に生命保険をかけ、自殺する。
組織は、その自殺した父親を新人類にすべく、彼に「強いけど怪獣のような容姿で生き返らせる変わりに妻を殺せ」と命じる。命令に反する行動をした場合、生前から彼を監視していた(失敗作を処分する)新人類が、彼を殺すことになる。
こうして、怪獣のような容姿で生き返った父親は、命令どおり妻を殺すか、生前にいたぶられた借金取りや不良に復讐して金を奪うか、難しい選択を迫られる。
監視役の新人類は、生前のその父親の苦境を知っており、彼が命令に反した場合、彼を殺していいものか、(善悪を持っていない新人類のはずなのに)何かを感じてしまう。
結局、怪獣になって生き返った父親は、妻を殺さず、残忍に復讐を果たしていく。
そして、結局、監視役の新人類(一応ヒーロー役)にあっけなく殺されてしまう。
こんな内容。
懐かしさを覚える映像の雰囲気、怪獣(怪人)とヒーローという構図、『HERO』というタイトル、これらは小さい頃に観た戦隊物とかウルトラマンを思い出させる。
けど、そんな単純な勧善懲悪の話でも、カタルシスを感じて満足する話でもない。
むしろ、単純には割り切れない状況を創り出して、観客自身にも選択を迫ってくる。
※以下、制作者が一義的に意図した「怪獣(怪人)とヒーロー」の構図ではなく、怪獣(怪人)の中の「怪獣(怪人)とヒーロー」という構図に関して書いていく。というのも、元は家族思いの優しい父親だった怪獣(怪人)の方にこそ感情移入できるから。
優しくて善い人だけど、弱くて、悪人に対して何も言えない、何もできない。だから、抑圧されているという気持ちがどんどん積もっていく。
それは、社会で生きる多くの人が強いられる境遇である。
「あの列に割り込んできたおばちゃんを・・・」、「あの理不尽な上司を・・・」、「人間性のかけらもないあの犯罪者を・・・」、「庶民を抑圧してきたあの王様を・・・」。
そんな、優しさと醜さを抱えている弱い人間が強大な力を手に入れたとき(ヒーローの立場になったとき)、悪人に対しても優しい心を維持できるか? それとも、復讐心や偏狭な正義感から、我慢できず悪人に対して強大な力を行使してしまうのか?
「ヒーロー」による、このあまりに人間的な(けれど実に真っ当な)葛藤が、共感と哀愁を誘う。
主人公である新人類(ヒーロー)の内面とか、新人類を作る組織とか、描写が足りないと感じるところもあるけど、(インディーズということもあって)話を拡げすぎていないことが逆に、話の焦点を絞ることになり、中途半端な観るべきところのない作品になるのを防いでいる。
そんなわけで、全体の評価としても、テーマ性のある決して悪くはない作品。(部分的な評価ではなく全体の評価ができる時点で、自分にとっては好評価に入る)
ちなみに、上で書いたとおり、塙花澄さんは口を利けない奥さんの役だった。
塙さんが表情とか短い言葉とかで表現するのが上手いことはブログを見れば分かるとおりであって、実際、映画の中でも見事に演じきっていた。
ただ、せっかく、話している姿をたくさん見れるチャンスだと思っていたのに、話せない役だと分かったとき、思わず突っ込みを入れたくなった・・・。(一度、オリコンブログの自己紹介動画?を見たことはあるけど。) これだけが残念。
フランシス・フクヤマ 『アメリカの終わり』 (会田弘継訳/講談社、2006年)
『歴史の終わり』で自由民主主義の最終的な勝利を宣言し、対イラク政策では強硬策を主張するなど、ネオコンと思われていた政治学者によるネオコン批判の書。
アメリカで『America at the Crossroads(岐路に立つアメリカ)』のタイトルで出版され、ベストセラーになっていた。また、ニューヨーク・タイムズ紙の「今年の100冊(100 Notable books of the year)」の中にも選ばれている。
のだけど、日本人の自分には、何がおもしろい or 新しい or 重要なのか、よく分からなかった。
こんなとき頼りになるのが「訳者解説」なのだけど、訳してるのが共同通信の人ということもあってか、疑問に答えてはくれていなかった。
自分が考えつくのは、アメリカ人は自分たちを「世界の警察」であるかのように信じきっているけど、今やアメリカは親米の国も含めた世界中の人々から信頼されていない、ということをはっきりと言っていることくらい・・・。
ただ、さすがに、こんなことくらいアメリカでも左派によって言われてるだろうし、そんなにインパクトがあるとは思えない。
というか、そもそも、この本の主張は、つまるところ、「イラク戦争は手段が間違いだった」ということだから・・・。(自分の読みが浅すぎるかもしれないけど)
ちなみに、主な主張は以下の通り。
・ネオコンの源流は、1940年代にマルクス-レーニン主義に幻滅したニューヨーク市立大学に集った左派知識人で、その後、1960年代には学生運動などの過激な進歩的改革に異を唱えた。彼らの共通原則として、大胆な社会改造を批判するというものがあったが、それは今のネオコンには失われている。
・欧米でテロを起こすイスラム教のテロリスト(聖戦主義者)は、欧米で暮らしている人が多く、そこで疎外を感じ、イスラム教を自己のアイデンティティとし、その結果、過激な行動を起こしている。
・経済的に発展するためには、政治的な発展が重要。しかも、それは内発的なものでないといけない。
・国際機関には、正統性と実効性という、しばしば矛盾する二つの評価軸がある。
・アメリカが目指すべきは、「現実主義的ウィルソン主義」と「重層的多国間主義」。ソフト・パワーも重要。
何気に、自分にとって一番興味深かったのは、欧米のイスラム教徒のテロリストが西洋的だという話。著者も指摘している通り、これは安易な「文明の衝突」説への反論になっている。
アメリカが取る政策として「現実主義的ウィルソン主義」というのは、日本にとってもその他の自由民主主義国にとっても最も望ましい政策だと思う。ブッシュ政権が過度に介入主義(ウィルソン主義)だっただけに、その反動として孤立主義(モンロー主義)に傾くこともあり得ないことではない。その場合、日本は、北朝鮮、中国にどのように対処していくのか? ここのところずっとアメリカ頼りだっただけに、前もって想定しておく必要があるかもしれない。(ただ、現実的には、モンロー主義になるより、民主党の大統領になって日本より中国を重視するようになる可能性の方が高そうだけど。)
なにはともあれ、刺激に満ちた、思考を促すような本ではなかった。