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フランシス・フクヤマ 『アメリカの終わり』 (会田弘継訳/講談社、2006年)
『歴史の終わり』で自由民主主義の最終的な勝利を宣言し、対イラク政策では強硬策を主張するなど、ネオコンと思われていた政治学者によるネオコン批判の書。
アメリカで『America at the Crossroads(岐路に立つアメリカ)』のタイトルで出版され、ベストセラーになっていた。また、ニューヨーク・タイムズ紙の「今年の100冊(100 Notable books of the year)」の中にも選ばれている。
のだけど、日本人の自分には、何がおもしろい or 新しい or 重要なのか、よく分からなかった。
こんなとき頼りになるのが「訳者解説」なのだけど、訳してるのが共同通信の人ということもあってか、疑問に答えてはくれていなかった。
自分が考えつくのは、アメリカ人は自分たちを「世界の警察」であるかのように信じきっているけど、今やアメリカは親米の国も含めた世界中の人々から信頼されていない、ということをはっきりと言っていることくらい・・・。
ただ、さすがに、こんなことくらいアメリカでも左派によって言われてるだろうし、そんなにインパクトがあるとは思えない。
というか、そもそも、この本の主張は、つまるところ、「イラク戦争は手段が間違いだった」ということだから・・・。(自分の読みが浅すぎるかもしれないけど)
ちなみに、主な主張は以下の通り。
・ネオコンの源流は、1940年代にマルクス-レーニン主義に幻滅したニューヨーク市立大学に集った左派知識人で、その後、1960年代には学生運動などの過激な進歩的改革に異を唱えた。彼らの共通原則として、大胆な社会改造を批判するというものがあったが、それは今のネオコンには失われている。
・欧米でテロを起こすイスラム教のテロリスト(聖戦主義者)は、欧米で暮らしている人が多く、そこで疎外を感じ、イスラム教を自己のアイデンティティとし、その結果、過激な行動を起こしている。
・経済的に発展するためには、政治的な発展が重要。しかも、それは内発的なものでないといけない。
・国際機関には、正統性と実効性という、しばしば矛盾する二つの評価軸がある。
・アメリカが目指すべきは、「現実主義的ウィルソン主義」と「重層的多国間主義」。ソフト・パワーも重要。
何気に、自分にとって一番興味深かったのは、欧米のイスラム教徒のテロリストが西洋的だという話。著者も指摘している通り、これは安易な「文明の衝突」説への反論になっている。
アメリカが取る政策として「現実主義的ウィルソン主義」というのは、日本にとってもその他の自由民主主義国にとっても最も望ましい政策だと思う。ブッシュ政権が過度に介入主義(ウィルソン主義)だっただけに、その反動として孤立主義(モンロー主義)に傾くこともあり得ないことではない。その場合、日本は、北朝鮮、中国にどのように対処していくのか? ここのところずっとアメリカ頼りだっただけに、前もって想定しておく必要があるかもしれない。(ただ、現実的には、モンロー主義になるより、民主党の大統領になって日本より中国を重視するようになる可能性の方が高そうだけど。)
なにはともあれ、刺激に満ちた、思考を促すような本ではなかった。