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 朝野光陽 『「モー娘。」の経済学』  (オーエス出版社、2002年)

 ひどい本。

 経済学なんて1ミリも出てこない。新聞記事レベル(かそれ以下)の経済の話がときたま出てくる程度。

 で、その程度の話をモー娘。についての話の最初か最後にかなり強引に結び付け(ようとし)てるだけ。

 モー娘。の話も、何の根拠もない著者の勝手で強引な推測・妄想・雑感を論理破綻とか矛盾をもろともせず偉そうに語ってるだけ。( そこらの大学生でも何倍もマシな文章書くってレベル。)

 モー娘。に勢いがあろうがなかろうが全く関係なくひどい本。(著者も出版社も)よくこんな本が出せたものだと、本当に感心してしまう。

 良いところを挙げれば、保田圭を「ルックス的不良債権」と言いきったところだけ。
 
 
 最後に、著者の知的レベルを端的に表す文を2つだけ引用しておこう。(ちなみに、太字は実際に太字にされてるもの・・・。)

世の不良債権対策のみならず、さまざまな構造改革を行う上で大切なことは、その対象となる事象や組織、それに関わる人間の性質、性格を正しく見極めることである。 (p72)

重要なのは、その土地に見合った戦略を考え、場合によっては、地道にじっくり時間をかけて開発をするということである。 (pp89-90)

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 小嵐九八郎 『蜂起には至らず――新左翼死人列伝(講談社文庫、2007年)

 1960~1970年代の新左翼運動を闘い、今は死んでいる人たち(運動に絡んで死んだ人が中心だけどそうでない人もいる)の生涯の記録に、その時代の状況や自らも活動家であった著者の感想・感慨を交えて、クセのある筆致で記した本。

 取り上げられるのは、樺美智子、高橋和巳、奥平剛士、森恒夫、本多延嘉など27人。

 多くが、若さゆえの過激なまでの理想主義、過剰な潔癖さ、(そして、無知)のために運動にのめり込み、若くして命を落とすことになっている。言ってしまえば、若気の至りによる死でもあるだろう。

 こうした生を実名で取り上げて公にすることは、なかなか辛いことだ。帯では27人を悼むの鎮魂の書となっているし、著者自身にその自覚はないのだろうけど、この本を読んで感じるのは、人の命の虚しさとか儚さだ。

 こういう死がたくさんあったればこそ、庄司薫が若々しさのまっただ中で犬死しないための方法序説なんてものを書いたのも、改めて納得させられる。(『狼なんかこわくない』の副題)

 とはいえ、その一方で、現代に生きる人間として、(命を懸けてまで)理想に生きる生き方が、あるいは、政治という他人に関することに生きる生き方が、どうして可能だったのか、その秘密を探りたい気持ちがある。それが1960~70年代の学生運動への興味を呼び起こす。

 が、やはり、この本でも、その秘密は、(ただの安易な)「若さ」でしかなかった。むしろ、この本は、他の本以上にこの要因が強調されているようにさえ感じる。

 そんなわけで、命を懸けて理想に走る人生に「おっ」と感じつつも、結局、その動因が「若さ」(か年をとってると偏狭なイデオロギー)だと知ってがっくりきて、最後には、空しさと儚さだけが残る本だった。
 
 
 ちなみに、著者はもう運動からは抜け出しているようだけど、「国家権力」なんていうやたらと抽象的な言葉を多用したり、衝突での警察官の死者は名前も状況も書かずさらっと済ませていたり、依然、冷静で公平な視点でものを見ることはできていない。

 それから、学生運動とかをその当事者が回顧する類の本での、その現実の多くの実害にもかかわらずの、楽しそうな感じには、いつもながら嫌悪を覚える。

 谷川俊太郎 『詩ってなんだろう(ちくま文庫、2007年)

  詩とは何かという問いには、詩そのもので答えるしかないと思った著者 (裏表紙)が、小中学生でも読めるように作った(編集した)本。

 わらべ唄やかぞえ唄から、翻訳詩、現代詩まで、実にバラエティに富んだ(分かりやすく)楽しい詩がたくさん収録されている。そして、それらに著者が一言ずつ楽しさを煽るコメントをしている。

 あらゆる詩の技巧(やり方)、詩の楽しさが網羅されていて、詩入門に最適。

 解説で華恵が言ってるような、不自由で説明的でつまらない詩の授業を受けたりして詩に否定的な印象を持ってる人が読むと、解放されるかもしれない。

 もちろん、それでもよく分からない意味不明な詩ってのは世の中にたくさんあるだろうけど、とりあえず、詩の楽しさがどういうところにあるのかを知る一歩としては優れてると思う。
 
 
 ちなみに、収録されてる詩の中で一番好きなのは、国木田独歩(1871-1908)の「沖の小島」っていう作品。

沖の小島に雲雀(ひばり)があがる
  雲雀すむなら畑がある
  畑があるなら人がすむ
  人がすむなら恋がある

 イメージとか世界が次々広がってく伸びやかな感じが好き。思えば、天地創造の情景にも似てる気がする。( だからどうしたって話だけど。)
 
 
 それから、思わず「おぉ!」と思ったのがこれ。

すきじゃないわ
  きらいよ
  でーとなんて
  するもんですか (p68-69)

 ツンデレをここまで簡潔に表現しえてるものって、他にないと思う。ちょっと言葉使いが古いけど、傑作。( ちなみに、一文字目の“縦読み”ってやつね。)


 木田元 『木田元の最終講義――反哲学としての哲学(角川ソフィア文庫、2008年)
 
 
 大学退官時に行われた最終講義(とその補説)および最終講演を収録したものの文庫化。

 最終講義では、ハイデガーの『存在と時間』を読みたい一心(p11)で大学に入ったという著者の学究人生を振り返りながら、ハイデガー哲学の大枠を色々な逸話を交えながら話している。

 ちょっとした自叙伝でもあり、一人の哲学研究者の読書遍歴や思考遍歴を知ることができるという点ではおもしろい。ただ、ハイデガーの哲学の中身についてはかなり簡単な説明で済まされていて、これだけではよく分からない。それから、〈存在=生成〉と見る日本と〈存在=被制作性〉と見る西洋で根本的なものの見方・考え方が違うという結論的な主張は、そんなに根本的に違うとは思えない。違いはあるにしても誇張しすぎだと思う。

 最終講演では、エルンスト・マッハの「現象学」の概略とその多方面にわたる影響をこちらも色々な逸話を交えながら話している。

 マッハの現象学的な考えは、非主流的な科学観・哲学観のようでありながら(だからこそ)、アインシュタインをはじめとする様々な人たちに影響を与えていることに驚いた。
 
 
 哲学って、こういう啓蒙書とか入門書とかで読むとすごくおもしろそうなんだけど、いざ実物に当たってみるとさっぱり意味が分からなかったりするのがヤダ。( 最も近い挫折は、アドルノ=ホルクハイマー。3回くらい挑んで毎回同じ箇所(たしか30~40ページくらい)で挫折した。)

 阿佐ヶ谷スパイダースpresents 『 失われた時間を求めて 』 作・演出:長塚圭史/出演:長塚圭史、伊達暁、中山祐一朗、奥菜恵/2008年5月8日~27日/@ベニサン・ピット
 
 
 夜のように暗く、なんとも閉鎖的な、公園のような空間で、不可思議な4人によって、静かに繰り広げられる、不可思議な人間模様からなる、芝居。

 いわゆる、不条理劇。

 なんだけど、そこで相対化されるのは、時間、記憶、価値基準、会話など・・・・。

 そんなものが相対的(あるいは、主観的)であることくらい、(難しい哲学者たちの名前を出すまでもなく、)誰でも知ってる。

 例えば、楽しい時間はあっという間で、つまらない時間はいつまで経っても終わらないこと(つまり、時間が相対的であること)くらい、小学生でも知ってる。高校生にもなればかなり自覚的に知ってる。あるいは、人間同士が100%意思疎通・相互理解することが不可能であることくらい、大学生か遅くとも社会人になれば誰でも強烈な実感を伴って思い知らされる。過去の記憶が一定で平坦でないことくらい誰でも知るまでもなく知ってる。等々。

 なのに、こんな程度のものを、大の大人たちが、さも高踏な哲学的なもののようにやるなんて、つまらないに止まらず、恥ずかしい。

 いったい、あんたたちはどんだけ悩みのない独り善がりな生を送ってきたんだ。

 なんでもありのポストモダンな世の中で、いったい、今さら何をやってるんだ。

 思うに、時代は、半周先に進んでいる。

 今問われるべきは全く反対の問いだ。
 
 
 果たして、今の世の中で絶対的なものって何だろう――?
 
 
 あるいは、ちょっぴり具体的に言い換えるなら、あんたたちが軸・核心に据え(られ)るものっていったい何だろう――?
 
 
 これを、“説得的に”示せてこそ、意味のある芝居(芸術作品)だと認められる。( もちろん、これが全てではないけど、今回の芝居が挑んだ土俵においてはこれが重要な基準になる。)
 
 
 (不条理劇だから)ストーリーもなかったけど、他にも何もない芝居だった。( 作った人たちの浅薄で陳腐な実存以外。)

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