忍者ブログ
by ST25
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 赤川次郎 『早春物語(角川文庫、2011年)


 子供と大人の間の微妙な年頃である17歳の女の子が、背伸びをして大人の世界に足を踏み入れてしまう。そして、子供らしい浅薄な思慮から出てくる大胆な行動を重ねることで至った結末は、あまりに大きなものだった。


 この小説は、微妙な年頃の少女を描いているけど、その描き方は大味で、繊細な心理描写とか細かい設定とかにはあまり気を払われていない。

 その一方で、赤川次郎らしく、物語の展開に(ちょっとした)奇抜さがあって、ミステリー的な要素はある。とはいえ、あくまでここがこの小説のメインではないから、それほど大それたものではない。

 となると、小説全体では、深みもなくあっさりした、セールスポイントのない作品ということになる。

 

PR
 「SONIC MANIA 2011」 (出演:UNDERWORLD、PRIMAL SCREAM、BOOM BOOM SATELLITESほか/2011年8月12~13日/@幕張メッセ)


 サマソニの前夜祭的に開かれた夜通しの夏フェス。

 
 夜に帰宅後、軽く準備を済ませて出発。11時半前に到着。9時半にイベントは始まってはいたけど、最大のお目当てであるアンダーワールドには予定通り間に合った。

 アンダーワールドは去年、ZEPP TOKYOで一度体験してるけど、今回は会場のスペースに余裕もあって、じっくり気持ちよく自分のペースで楽しめた。しっかり綺麗な音を聴きながら楽しみたい自分にとっては、抑えめなボリュームも嬉しかった。パフォーマンス的には、「Two Months Off」なんかで少し音がバラバラになってたように感じたけど、他はまぁ平均的なアクトで、十分楽しめた。

 人気のアンダーワールドで、こんな空間的に余裕のあるところで楽しめるなんて思っていなかった。それだけに満足度は高かった。それに、空調が効いてるのも快適だったし。


 他に聴いたものは、ボリュームが大きすぎて低音がこもってはっきり聞こえなくなってしまっていてイマイチ、というものが多かった。

 それ以外では、最後の方しか聴いてないけど、VITALICはまあまあだった。それから、autoKratzは良かった。やっぱりテクノ系のライブは、バカ騒ぎより、皆それぞれが気持ち良さそうに自分なりに楽しんでいるようなのがいい。autoKratzのアクト中は、(前の方以外は)まさにそんな感じで、音に魅かれて観客も少しずつ集まってきて踊りだす、といった感じだった。

 昼間一日稼働した後でのイベントで眠気とか疲労とかを心配してたけど、足がちょっと疲れたくらいで問題なく楽しめた。満足満足。
 

 重松清 『せんせい。(新潮文庫、2011年)


 ちょっとわだかまりがあって表面上、心を開ききれていないような、そんな微妙な関係の教師と生徒との関係を描いた6つの短篇を収録している。

 教師による何気ない言動、あるいは、個性的なやり方に、生徒が意外にも影響を受けていたという内容の話が多め。

 学校の先生と生徒との関係は、実際、「ザ・師弟」みたいなものなんてあまりない。むしろ、先生を全然尊敬していなかったりするけれど、それでもさすがに子供であるだけに、後々考えると何かしら影響(良いもの悪いもの両方あるけど)を受けていたんだなあと思うことがあったりする。

 ただ、この本の話は、そんな関係に近いけれど、やや生徒が(正直、微妙な)先生を尊敬する方向に(やや不思議ながら)傾いている話が多い。

 いずれにしても、そもそも感動話にはなりにくいところを描いているけど、やはり、いまいち感動もしなかったし、共感もできなかった。

 春日真人 『100年の難問はなぜ解けたのか――天才数学者の光と影(新潮文庫、2011年)


 数学界の重要な未解決問題で、100万ドルの賞金が掛けられていた「ポアンカレ予想」を証明したのにもかかわらず、賞金の受け取りを拒否し、表舞台から姿を消しているペレリマンに迫る、NHKのドキュメンタリー番組の書籍化。

 ペレリマンによる解決に至るまでの他の数学者の貢献と、ペレリマンの生い立ちや人となりを描いている。

 ただ、肝心の「ポアンカレ予想」がいかなるものかという説明は、分からせようという努力の跡はうかがえるけれど、イメージできないし分かりにくい。

 また、結局ペレリマン本人とは接触できていなくて、賞金受け取り拒否の理由などの真相も明らかにならないまま終わっている。

 そんなわけで、(ページ数も多くなく、内容も多くないこともあって、)読みやすいけれど、ペレリマンについてもポアンカレ予想についてもそこまで詳しく知ることができない。

 わざわざテレビ番組にして本にまでするくらいだから、(サイモン・シンの本並みとまではいかなくても、)それくらいのことは期待していただけに、少し期待外れで読み応えがない本だった。

 貴志祐介 『新世界より(上)・(中)・(下)(講談社文庫、2011年)


 戦慄。 読書でここまでおもしろさに興奮したのは久しぶり。 おもしろかった。


 1000年後の日本は、放射能の影響を思わせる奇態な生き物たちが蠢く異様な世界に変わっていた。 しかし、そこでは、思い描いたことを実現する「呪力」を持った人々が、知能が発達したバケネズミを奴隷とし、実に平和で穏やかな生活を送っている。
 
 その理由の一つには、人類が人類に対して攻撃すると自らの命が絶たれるという生理的なメカニズムである「 愧死機構(“きし”きこう) 」(作者と同じ名前)を備えていることがある。 また、何やら秘密主義的で管理主義的な教育制度が整備されてもいる。

 そんな世界で、主人公たちを危機が襲う、というSF小説。


 ファンタジー的、ミステリー的な話の展開のおもしろさはもちろんのこと、ほかにも、話の設定が過去から現代までの人類たちの歴史の延長線上にあったり、その進化が皮肉な結果をもたらしたりと、何重にも話のおもしろみがある。

 それこそ、ハックスリー『すばらしい新世界』における近未来の悲劇と、チャペック『山椒魚戦争』における(誰か/何かを支配するという)帝国主義の悲劇とを合わせたような、深みとおもしろみがある。

 難点としては、子供たちが命の危険を冒して規則を破りすぎていたり、危険なところを行くのに呪力を簡単に奪ってしまっていたりという、ご都合主義的な展開がいくつか散見されたところ。

 ただ、そこまで致命的なほどではないし、それを補ってあまりあるほど圧倒的な迫力と勢いが物語全体にみなぎっている。


 この手の壮大な物語を書く日本人作家はあまりいないだけに、感動もひとしおだった。

カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新コメント
[10/20 新免貢]
[05/08 (No Name)]
[09/09 ST25@管理人]
[09/09 (No Name)]
[07/14 ST25@管理人]
[07/04 同意見]
最新トラックバック
リンク
プロフィール
HN:
ST25
ブログ内検索
カウンター
Powered by

Copyright © [ SC School ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート and ブログアクセスアップ
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]