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水谷修 『夜回り先生』 (小学館文庫、2009年)
闇の世界に落ちていく子供たちを救う行動を続ける、以前NHKなどでも取り上げられた教師の本。
本としては内容すかすかだけど、彼の行ってきた自らの犠牲をいとわない行動はすごい。
その行動の前ではただただひれ伏すしかないような気持ちになる。
指導者や教育者の世界には色々なカリスマがいるけど、暑苦しくなくて好きなタイプのカリスマ。
木村元彦 『オシムの言葉』 (集英社文庫、2008年)
祖国である旧ユーゴの内戦と解体という「政治」に巻き込まれながらも、自分のサッカーを追い求め、貫き続けたオシム前日本代表監督のサッカー人生を追ったノンフィクション。
タイトルから想像されるような、ただの「オシム語録」ではない。
さまざまなエピソードやオシム自身の言葉や行動を通して、一本筋の通ったオシムのサッカー哲学が垣間見える。
しかし、オシムに教えを受けた選手自身による証言が、何より、オシムのすごさを伝えてくれている。
特に代表を外された宮本との交流が興味深かった。
それにしても、「とにかく走る」とか、「攻守の切り替えを早く」とか、2006年のワールドカップで日本代表に明らかに欠けていたものだし、次のワールドカップにオシムジャパンで挑んで、世界の中でどこまで闘えるのか見てみたかった気がする。
それから、なんといっても、オシムのサッカーに合いそうなナカタとの組み合わせも是非見てみたかった。
東野圭吾 『レイクサイド』 (文春文庫、2006年)
4組の親子が参加する中学受験のための勉強合宿で起こった殺人事件を描いたミステリー小説。
トリックだけのミステリー。
つまりは、アイディアだけが見せ所なミステリー。
だとすると、300ページ弱のストーリーも冗長に思えてしまう。
ところで、この本のAmazonのレビューがひどい。
いわく「演劇的」、いわく「心情が描かれていない」・・・・。 しかし、これらは「解説」に書いてあることそのままだ。 それをあたかも自分が考えたみたいに平然と書くのはどうなんだろうか。
あるいは、いわく「社会派」、いわく「現代的」・・・・。 しかし、社会的なことを描けばなんでもかんでも「社会派」になるわけではない。 というか、そもそも、人間を描く時点で全ての作品は「社会派」だとも言えるわけだ。 ということは、設定とか舞台とか表層だけを見て「社会派」とか言うべきではないのだ。
ったく。
重松清 『小さき者へ』 (新潮文庫、2006年)
例によって、弱くとも優しい人々が登場する、家族や友情や大人や子供を描いた6つの短編。
他の本に比べると、最後はぐっとくるけどそこまでの過程が少し平坦で冗長気味な話が多め。
とはいえ、重松清であることに変わりはないけど。
人生は、確かにこの小説たちみたいに甘酸っぱく辛いものではあるんだけど、でも、こんな爽やかできれいで美しくはない。 もっと、泥臭く、醜く、苦しく、つまらないものだということも承知していただきたいところではある。