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『胎内』(作:三好十郎、演出:鈴木勝秀、出演:奥菜恵、長塚圭史、伊達暁/2005年10月20日~30日/青山円形劇場)
ちょうど1年前にやっていた作品。
DVDが発売されたという話をネット上で見て思い出し、少し考えてみたら観劇後の感想を言語化できそうな感じだったから書いてみた。
敗戦からまだ2年の日本。警察に追われている金持ち男(伊達暁)とその愛人(奥菜恵)が防空壕に逃げ込むと、戦争で全てを失った復員兵(長塚圭史)がそこに潜んでいた。そのとき地震が起きて3人はその中に閉じ込められる。そうして作り出された極限状況で繰り広げられる、3人の実存に関する独白が織りなす話。
長塚圭史率いる「阿佐ヶ谷スパイダース」の作品紹介のページには次のように書かれている。
「 戦後の復興期に、戦争の本質と、ギリギリの極限まで追い詰められた男女の、ひいては人間の本質、本性、生と死、そして再生、が圧倒的な力量で描かれています。 」
という話なのだが、観たときの感想は「浅い」。
「極限状況における人間」については、現代人はリアルな経験とその記録を持っている。
その代表的な記録は、ナチの強制収容所に閉じ込められた心理学者による、V.E.フランクル著『夜と霧』である。
こういったことを踏まえるなら、この舞台を観る際には、「人類が経験した“実際の経験の上に”、どういう“創作”をしているのか?」に注目することになる。
が、『夜と霧』が正常で平和な世界に生きる人間からは想像を絶する内容なのに対して、『胎内』は正常で平和な世界に生きる人間が想像し考えられる範囲内の内容なのである。
そんなわけで、「極限状況の人間を描いた“作品”」である『胎内』は、事実に敗北した失敗作なのである。
やっぱり、観たことのあるもの、考えたことのあるもの、知ってること等々をやられてもおもしろくない。何か新しいものがないと。
ちなみに、演技に関しては、長塚圭史が中の上、奥菜恵が中の中、伊達暁が中の下といった感じで特に印象に残るものはなかった。
〈前のブログでのコメント〉
- 学者としての誇りが感じられた。職業としての学問だね。
- commented by やっさん
- posted at 2006/10/21 18:31
アイドル研究家も学者扱いしてくれるのですか!(笑)
それはさておき、テレビドラマが典型だけど、一般向けの文化とか芸術とかって、本当に同じようなものばかりでつまらないのですよ。同じようなものを作るのならプロとは言いがたいです。- commented by Stud.◆2FSkeT6g
- posted at 2006/10/21 18:42