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 野口旭 『グローバル経済を学ぶ(ちくま新書、2007年)
 
 
 「グローバル化(市場開放)すると自国経済に打撃を与える!」、「国際競争力をつけなければ!」、「貿易黒字/赤字を解消しなさい!」というよく聞く俗説が誤りであることを、基本中の基本な国際経済学を用いて簡単かつ丁寧に説明している本。

 同じちくま新書に、この著者による『経済対立は誰が起こすのか』という本があり、内容・主張で重複するところは多い。

 だけど、個人的には今回の本の方が説明が丁寧かつすっきりしていて分かりやすかった。
 
 
 それで、主張の正しさは分かったが、では果たして、直観に反するこれらの主張はどのように表現すれば世間で受け入れられるだろうか?

 ちょっと挑戦してみる。

 「貿易黒字/赤字」問題に、貯蓄-投資バランス論によって応える。

 貿易黒字/赤字の問題とは、要は、輸入超過側=貿易赤字国側(例えば、アメリカ)から見れば、 貿易赤字になるのは、国民の消費が活発で、自国内で生産をまかないきれない場合、輸入せざるを得ず、貿易赤字になる。ということであり、別段問題はない。 ということである。
 
 他方、輸出超過側=貿易黒字国側(例えば、日本)から見れば、 貿易黒字になるのは、国民の消費が活発ではなく、自国内の生産資源(機械とか労働とか)に余裕があり、その余裕分で作った製品を必要としている国に輸出できるから輸出する、と貿易黒字になる。 ということである。
 
 これを見ると分かるとおり、貿易黒字/赤字というのは、あくまで、ある一時点での国の間での過不足分のやり取りに過ぎない。
 
 決して、二国間の国際競争力の違いによって生まれるものではない。
 
 これのどこがいけないのだ? むしろ、助け合いじゃないか?

 というのはどうだろうか?

 いや、もちろん、貯蓄-投資バランス論というのは、正確には「 経常収支=貯蓄-国内投資 」で表されるものだというのは百も承知だけど、上の説明でもほぼ同じことは言えているのではないだろうか?どうだろうか?

 
 他にも、比較優位論、ヘクシャー=オリーン=サミュエルソン・モデル、プロダクト・サイクルなどを使って各種俗説が正されている。

 保護貿易主義の間違いも重要だから簡単な言葉で説明できるようにしたいけど、こっちは結構複雑だから難しい。
 
 
 ところで、この本は良書であってここで書きたいことがあったから最後に簡単に批判するに止めておくけど、この著者は未だに「専門知-世間知」とかいう分類を使っている。

 「専門知」に依って立つことを明言しているこの著者は、経済学の他にも、この本の内容・文章と関係する、政治学、社会学、法学、歴史学、心理学、医学、言語学、日本文学、日本語学といった、あらゆる学問のあらゆる領域の「専門知」を全て習得しているということだろうか?

 「専門知」という言葉を使い、(「世間知」に対する)「専門知」というものを擁護できるのはそういう人のみのはずである。

 ちなみに、著者が何の間違いか、「世間知」を用いてしまっている箇所を少なくとも1箇所見つけた。

対外自由化とはまさに自らが保持している行政権限の縮小を意味することになるのですから、通産省がそれに抵抗するのも当然です。 (p36)

 ここで「当然」とか言ってしまうのは「世間知」。

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