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 本谷有希子 『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(講談社文庫、2007年)
 
 
 各種の演劇賞、文学賞をにぎわしている、1979年生まれの若き劇団主宰者・小説家による小説。今夏、佐藤江梨子主演で映画化される。

 本谷有希子の名前は各所でいろいろ聞いていたけど、作品に触れるのは初めて。

 期待して読んだけど、特におもしろくはなかった。

 自分が唯一無二の特別な存在だと信じ込むことで生きている澄伽、澄伽の現実離れした危うさを分かりつつも彼女を肯定する役割を引き受け続ける血の繋がりのない兄・宍道、澄伽をひたすら客観的に観察し続ける妹・清深、澄伽とは対照的に現実の平凡さ・厳しさをそのまま受け入れて大きな望みを抱かずに生きている宍道の妻・待子。この4人の危うい同居生活および澄伽の危うい実存が破綻するまでを描いている。

 確かに、澄伽のように、現実の辛さに目を向けず、他者とのコミュニケーションも自己肯定や自己の存在意義の確認のためのものでしかない、“自我のもろくて危うい人”というのは現代に多い特徴の1つかもしれない。

 だけど、この現象自体はけっこう認識されていて、作品の主題として新奇なものではない。

 では、「描き方に何か秀でたものがあるか?」といえば、別にそうでもない。

 特に、登場人物たちではない第3者的な視点から4人をほぼ同等に扱っているために、どの人をとっても描写・踏み込みが浅くなっている。

 ストーリーも、危うい自己が破綻するまで、いたってシンプルな流れ。

 高橋源一郎の「解説」も、最初に本谷有希子をべた褒めしてる割に、後半で小説の内容に触れつつ言ってることは1970年代かと見まがうばかりの古い話でしかない。すなわち、「絶望的な現実に直面する実存」という。これでは肯定的な評価にならない。

 と、そんなわけで、この作品は期待外れだったのだけど、Amazonの単行本版のレビューを読んで、本谷有希子に対する判断は持ち越すことにした。

 というのも、まず、この小説は、舞台で上演されたものを小説にしたものであるとのこと。

 それなら、焦点を1人に絞らず、各登場人物をそれぞれにそこそこ描き、結果、それぞれの人物の描写が浅くなるのもやむを得ないところかもしれない。

 それから、この小説は、本谷有希子の作品の中では出来の芳しくないものであるらしい。

 それなら、他の作品を読まないわけにはいかない。

 そういうわけで、結論。

 兎にも角にも他の小説を読まなくては。
 



〈前のブログでのコメント〉

読んだことないけどタイトルはカッコイい!
commented by やっさん
posted at 2007/05/20 05:44

タイトルはカッコいいけど内容と合ってない!w
commented by Stud.@管理人
posted at 2007/05/20 15:45
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