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by ST25
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 パオロ・マッツァリーノ 『反社会学講座』 (イースト・プレス、2004年)


 この本はかなりおもしろい。最初から最後までバテることなく大爆笑。


 この本では世間で流布している社会学的俗説をきちんとしたデータや反証例をもって論破している。そうして導かれる結論(著者が露わにする事実)は当然型破りなものとなる。そのような結論のおもしろさを引き出す著者の学才に、文才と笑才が相まって、完成度の高い“知的エンターテイメント”が作り出されている。


 この本を読んで思うのは、いかに世間の常識や通説が自分勝手なカタルシスによって作り上げられているかということ。多くの場合、悪者に仕立て上げられるのは若者で、お手本にされるのは今の大人たちの子供の頃や西洋。この本の中では、この構図を完全に覆してしまっている。したがって、学力が低く、勤労意欲がなく、忍耐力がないとされて、散々自尊心を傷つけられてきた日本の若者に読ませてあげたいと思ってしまう。


 ここで、各章の最後に付されている「今回のまとめ」から、著者の刺激的な主張をいくつか列挙しておこう。

「戦後最もキレやすかったのは、昭和35年の17歳です。」
「社会に出ると面倒くさいルールが多いので、ひきこもっていましょう。」
「痴漢はふれあいを求めています。」
「アメリカ人はイラクやアルカイダと戦う前に、妻や夫とも戦わねばなりません。」
「日本より欧米各国のほうが、若者のフリーター率が高くなっています。」
「勉強してもしなくても、テロリストになることがあります。」
「世の中が悪くなったのは、オレ以外の誰かのせいだ。」
「ブックオフの店員のあいさつはやかましいので、なんとかしてください。」
「自己破産のご利用は計画的に。」

 随分たくさん書いたが、本書にはもっとたくさんのおもしろいネタがあるため、これだけ書いてもまだまだ十分楽しめる。


 そして、上の引用を見ても分かるとおり本書で取り上げられるテーマは、少年犯罪、フリーター、少子化、学力低下など、近年世間で問題視されることの多い問題のほとんどを網羅している。そのため、本書の主張を知っておくと大抵の社会派の世間話には対応できる。したがって、もちろんテレビ・新聞や国会などの議論にも簡単に適用可能となっている。


 さて、本書の主張には一つの考えが通底しているように思える。それは、著者自身の言葉でいうところの「人間いいかげん史観」である。この考え方は現実的で妥当な認識だ。今vs昔、子供vs大人、日本vs西洋という枠組みで善悪を区切る思考方法は結局、往々にして自分に都合の良いように個人個人が勝手に使ってしまっている。筆者がこの言葉を使って切り捨てているように、「新しい歴史教科書」問題はその端的な例だ。


 今まで、この本の主張に乗って話を進めてきた。しかし、この本に書かれているものが事実であるかどうかは確信できるほどではない。こういう場合、反証がなされるまでは仮に正しいものとして考えておくのが適当な態度だろう。本書の主張からすると、保守的・右的な人は本書に反発を感じるはずである。そこで、是非とも保守的・右的な人たちには自分たちの主張を正当化するためにも反証を頑張ってほしいものだ。(そんな簡単に反論できるとは思えないけど。これは今まで感情論・感覚論に依存しすぎた保守・右にとってのツケだ。)



〈前のブログでのコメント〉
 ごもっともです。

 この手のカタルシスがやっかいなのは、短絡的に決め付けた“犯人”をいくら縛り上げても元の問題は全く解決されていないことです。そのため、同様な問題が再び起こったとき、さらに違う“犯人”を見つけ出して。。。これを繰り返すうちに自分も“犯人”にされ、“犯人”でないのは強者や権力者だけということも論理的にはあり得てしまいます。

 常に冷静に問題の本質を捉えて確実に解決を目指す手堅い方法を粘り強く続けるしかないようです。
commented by Student
posted at 2005/02/17 02:50
問題や不安を誰かに押しつけて前進した気になるというのは、よくある話ですね。特定されるのはだいたい少数派が多い。昨今の性犯罪者のメーガン法の議論もそれクサいと思っています。体制に迎合せず、真実と信念を主張していきたいものですね。
commented by やっさん
posted at 2005/02/16 12:49
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