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 パオロ・マッツァリーノ 『日本列島プチ改造論(大和書房、2009年)


 出版社のHP上で連載されていた短いコラムを100個集めたもの。

 例のごとく、社会問題とかにおもしろおかしくツッコミを入れつつも、何気に物事がよく見えてるのでは?と思わせる冷静さ・冷ややかさを兼ね備えた視線が垣間見えつつも、そんなことよりやっぱり何よりおもしろい!、という特徴が、今作ではけっこうよく出ている。

 読み終わった後、言われてみれば、自分のウジウジした思考はなんて愚かで滑稽だったんだ!と爽快な気持ちになれる。

 マッツァリーノの本の中では、(大きな差はあるけれど一応順番では、)『反社会学講座』(ちくま文庫)に次ぐ出来。

 思えば、デビュー作で見せた「統計漫談」はどこへやらという感じだけど、短いコラムだし、「データ命」の経済学者でもないから、別におもしろければ構わない。

 ただ、マッツァリーノといえども誰かに反論しようと必死になって余裕がなくなるとおもしろくなくなる。 というのは『つっこみ力』(ちくま新書)で実証されているところではあるのだけれど、今回の本でもまたその悪い癖が少し出ているのは残念なところ。


 それにしても、総理大臣が所信表明演説した直後に辞めちゃったり、農水大臣が顔にバンソウコー貼ってる理由をなぜか言い渋ったり、総理大臣が「未曾有」を「みぞうゆう」って読んでしまったり、少子化担当大臣が子供を作って見せたり、財務大臣がへべれけな状態(に見える状態)で国際舞台の会見に登場してきたり、という現実は、いちいち何か付け加えなくてもそれ自体でとってもおもしろい。

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 スディール・ヴェンカテッシュ 『ヤバい社会学――一日だけのギャング・リーダー(望月衛訳/東洋経済新報社、2009年)


 社会学者である著者が、シカゴ大学近くのギャングが支配するコミュニティに入り浸り、ギャングのリーダー、その手下たち、ホームレス、売春婦、ヤク売り、自治会長、住民、警察などが作り出す一般世間とは全く異なる「別世界」の様子を、彼らと交流を深めていき、生々しくレポートしている本。

 そこでは、ケガ人が出て救急車を呼んでも来てくれないし、警察は来たとしても住民たちから金を巻き上げに来るぐらいなものという、日本に住む者からするとにわかには信じられないような現実が繰り広げられている。

 そして、政府や警察や法律の代わりにそこを支配しているのがギャングたちだ。 彼らは、ホームレスや非合法な商売をしている人たちや不法占拠の人たちを含む「住民」たちから「税金」のようなものを強引に集め、その代わりに(ということになるのだろう)、そのコミュニティの最低限の秩序を保っている。 例えば、売春婦が立っていい場所を決めたり、売春の客が金を払わなかったら痛い目にあわせたり。

 とはいえ、もちろんそこはギャングだけあって、ただでさえ貧しいそこの住民たちに対してでも、慎みや情けのようなものはほとんどない。

 その他にも、生きることに必死なために起こるかなり利己的な行動があったり、その一方で住民同士の助け合いがあったり、かなり過酷で悲惨な環境下での様々な人間模様が繰り広げられている。 そして、登場する一人一人に様々な人生経験や考え方があったりする。 そんなことも筆者との交流の中で語られている。

 そんなわけで、読み物としてもおもしろい。

 そして、もちろん、アメリカの現実、政府のガバナンス、権力というもの、人間というものなど色々なことを教えてくれるという点でも、とても興味深くておもしろい。

 佐野眞一 『クラッシュ――風景が倒れる、人が砕ける(新潮文庫、2009年)


 JR西日本脱線転覆事故、17歳による殺人事件、雪印食中毒事件、東海村JCO臨界事故、阪神大震災、NY同時多発テロといった重大事件を追ったノンフィクション。

 この手のノンフィクションは、重大な出来事を忘れないためにもいいけれど、それより、発生当時の報道を見ていただけだと、衝撃ばかりが大きくて、原因や実際の状況についての( 推測ではない確かな )情報が驚くほど貧困であるという状況を修復させてくれるところが有益。

 阪神大震災のあの上空からの映像の下で何が起こっていたのか、雪印食中毒事件の背景にあった問題とは何か、そもそも東海村臨界事故はどのようにして起こったのか、同時多発テロ発生時に現地にいた日本人は何をしていたのかなど、いろいろ教えてくれる。

 大事件や大事故を消費しているだけの状態には( ならないように )自覚的でありたいものだ。


 ちなみに、この筆者は、まとめやコメント部分では、感傷的な、あるいは文学的な文を書く。 ただ、「ように思った」とか「ように見えた」とか断定口調ではないため、押し付けがましくならず、さほど気にはならない。

 瀬川松子 『中学受験の失敗学――志望校全滅には理由がある(光文社新書、2008年)


 中学受験に取り“憑かれ”、“疲れ”果てる「ツカレ親」の惨状を中心に、中学受験の現状を、その負の側面も包み隠すことなく詳(つまび)らかにしている本。

  中学受験を主題にした単行本や雑誌記事に見られるアドバイスは、どれも「そこそこ知的環境が整った家庭」の「そこそこ頭のいい子」にしか通用しない理想論ばかり (p13)という疑問が、著者の執筆動機。

 自分の子どもを思う気持ちは分かるが、自分とその自分が育てた子どもの頭の悪さに気づかない親たちの実例がいろいろ紹介されていて、おもしろい。

 ただでさえ、自分以外の他人に何かをさせることは難しいのに、それが遊びたい盛りの子どもとなるとなおさらだ。

 それに、結局のところ、“できる子”というのは親がいちいち言わなくてもある程度は自分でできるものなのではないだろうか。(12歳であっても。)

 そして、もしそうであるならば、親がいちいち何から何まで言わなければならない時点で、ダメ、あるいは、厳しい戦いを強いられるのではないだろうか。


 卓球の福原愛が小さい頃、「天才少女」と話題になり、その練習の様子がテレビでしばしば流されていた。それはもう地獄絵図で、本人は泣きじゃくってるのに親が厳しく叱ってワンワン泣きながら練習をさせているという映像だった。いくら小さい子どもで、いくら親だからといって、そこまで人格を尊重しなくていいのかと嫌悪感をもったものだ。無理やりやらせるだけなら、ただの奴隷だ。悪いことをしたから叱られるというのと、(仕事というわけでもない)卓球ができないから叱られるというのとでは質が違うだろうし。

 要は、人を人として見る、ただそれだけのことだ。

 町山智浩 『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない(文藝春秋、2008年)


 本当にトンデモないアメリカの政治・経済・社会の実像を、冷ややか、かつ、おもしろくレポートしている本。

 ブッシュ大統領のブッ飛んだ逸話が(マイケル・ムーアなどから)伝わってきたときも、アメリカはさすがにハンパないなぁと思ったけど、それらに勝るとも劣らないスゴイ話の数々が収録されている。

 例えば、見出しからいくつか拾っただけでも、「「9.11テロはホモなアメリカへの神罰!」」、「「女に選挙権を与えるな」と言う女性政治評論家」、「子どもにブッシュを拝ませる洗脳キャンプ」、「隠れゲイの反ゲイ政治家とヤったゲイ募集!」、「ミッキーマウスを十字架にかける牧師」なんてものがある。

 その他にも、外国で無辜の市民を勝手に拉致して拷問し、結局、ただの一般人だと分かり解放し、全く責任を取らない、なんていう北朝鮮まがいの行為までアメリカが行っている事実も書かれている。

 しかし、これらの喜劇的な現実の存在にもかかわらず、アメリカが世界に冠たる先進国として経済発展し、優秀な人間を輩出したりもしているのは、やはり、「自分のことは自分で好き勝手やるべきだし、他人のことなんか知らない」っていうような分断的で冷徹な自由主義・個人主義のためなのだろうか? でなければ、そんな現実は何とかしようとするのが普通だろうと、日本人の自分には思える。


 さて、それにしても、ブッシュが地の果てまで落とした世界の中でのアメリカの評判を、そして、トンデモないアメリカの現実を、オバマは変えることが出来るのだろうか?

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