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by ST25
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 寺島実郎 『世界を知る力(PHP新書、2009年)


 アメリカ的視角の相対化、人的ネットワークの重要性、米中関係の中での日米関係、世界に開かれた知の養い方を、それぞれ事例や自己の経験を紹介しつつ書いている。

 寺島実郎の本としては、(最終的な主張としては同じでも )内容的な新しさもあり、それなりにまとまりもあり、おもしろかった。

 政権交代が起こり、日米関係をはじめとする外交も今までと同じではあり得なくなった。 これからの日本の外交はどう進むべきか。 日本のメディアの「 アメリカの言うことに従うか、従わないか 」というあまりに狭小で愚昧な視点だけでは何も語ることができない。 ( ちなみに、メディアは、「従う」と「アメリカの言いなり」、「従わない」と「日米関係の重要さが分かってない」と批判する。)

 この本は、あまりに世界に目を開いてこなかった日本社会が、国際政治、国際社会の様態を知るのに有意義な視点を提起してくれている。

 先に読んだ宮台真司と福山哲郎の本でも主張されていたが、冷戦時代のままの日米関係は変えなくてはならないのだろう。 いずれにせよ、こちら(日本)が先に変えるか、向こう(アメリカ)から変えてくるか、だ。 寺島実郎に言わせれば、 日米関係は米中関係 なのだ。 こちらがゴマすって継続を望んでも、あちらが急に翻すことはあり得る。 プラグマティズムの国だ。

 では、日米安保を基軸にしつつアメリカ追従から脱却するにはいかにすべきか。 民主党政権が行おうとしているのはこれだろう。 しかし、この難題の解き方を指南している本や新聞や雑誌は皆無だ。( マスコミはこの問題意識を共有さえできていない。)

 動くべきだが動き方が分からない。 とりあえず必死に勉強するのも一つの手だろう。

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 宮台真司、福山哲郎 『民主主義が一度もなかった国・日本(幻冬舎新書、2009年)


 以前から知り合いだった社会学者の宮台真司と外務副大臣の福山哲郎が、政権交代によって起こった/見知ったことについて対談している本。 (とはいえ、宮台が7割くらい話しているけど。)

 民主党政権がようやく「外交」を始めたことで明らかになったマスコミなどの短絡的・表面的な思考の愚かさや、政権交代が起こる時代になったという変化に着いてこれない官僚などの愚かさの問題点はよくわかった。

 ただ、 福山さんが続けた。 『 官僚の方々と遣り取りを続けてきて、民主党が政権を取らなければ分からなかったいろんなことが分かったんですよ。 例えば、こんなこととか、あんなこととか・・・・ 』。 とてつもなく面白い話だったので、僕はすぐに懐から携帯電話を取り出した(p6)という、「まえがき」で書かれているこの本の出版のきっかけのエピソードから期待されるほどは、面白さも衝撃もなかった。


 それから、宮台がこれからの日本の進むべき道として、「談合主義+参加主義」( 対極の位置に「市場主義+権威主義」がある )を提唱している(p24など)が、いまいちどういう仕組みを想定しているのかイメージできなかった。

 ヨーロッパ的な談合主義(=コーポラティズム?)は労働・経営などの各セクターの代表が集まって話し合うもので参加主義とは相いれず、むしろ権威主義的である。 それに、「市場―談合」、「権威―参加」という2つの軸を出しているが、「市場」は「参加」と親和的で、「談合」は「権威」と親和的というのは、考えてみれば当たり前だ。

 対談本とはいえ、わざわざ表を作るほど有効な視点だとは思えない。


 そんなこともあり、外交的な話についてのリアリスティックな視点以外はあまり有意義ではない。 福山の官僚についての逸話も、自民党政権になじんできた官僚であればいかにもありそうな話でしかない。( 資料としての価値はあるにしても。)

 森達也 『(角川文庫、2002年)


 広報の荒木浩を中心に麻原逮捕後のオウム真理教をその内側から、というか至近距離から追ったドキュメンタリーの書籍版。

 彼らに密着し彼らを至近距離から撮ることで見えてきたのは、彼らのあまりの普通さ、平凡さと、それと(敵対心むき出しで)対峙する社会(国民たち)や権力(警察)の異常さ、野蛮さ。

 オウムが惨劇を起こしたことは事実なわけで、その片鱗をつかみきれていないのは制作者の力不足とも言えなくはない。 ただ、この作品の目的は固定観念や偏見を極力取っ払ってオウムを観ることであり、その結果映されたオウムも、それはそれで真実の一面なのだろう。

 それにしても、普通で平凡な人々を社会や権力が理性のかけらもなく追い詰める様はグロテスクだ。


 ちなみに、カメラの前で堂々と「転び公防」が行われているが、そのとき(橋本内閣時)の国家公安委員会委員長は自民党の倉田寛之。 朝日新聞の社長は分からない。 読売新聞の社長は分からない。 毎日新聞の社長は分からない。

 稲葉振一郎 『社会学入門――〈多元化する時代〉をどう捉えるか(NHKブックス、2009年)


  社会学とは何か?(p10)を考え、社会学とは 社会的に共有される意味・形式の可変性・多様性についての学問 (p209)である、という答えを提示している本。


 「社会学ってあまりに何でもかんでもやるので、かえってつかみどころがない」 (p9)から 社会学とは何か? を明らかにしなければ、という問題意識には共感する。

 けど、その答えには全く首肯できない。

 だって、「 社会学とは何か?」って、「 社会を研究する学問 」に決まっている。 すると、当然のごとく、「 じゃあ、“社会”とは何か?」という問いにたどり着く。

 言い換えれば、「 社会学とは何か?」という問いに答えるには、あまりに当たり前のことだけど、「 社会とは何か?」という問いに答えなければならないのだ。

 にもかかわらず、「 社会学とは何か?」という問いに対する本書の答えには、「 社会 」という言葉が使われてしまっている。 これでは、説明になっていない。 「会社」というものを「 会社員が働くところ 」と説明し、「 じゃあ会社員って何?」って聞かれて「 会社で働く人 」と説明するようなものだ。 (トートロジーってやつだね。)


 それから、この本は、学部一年生向けの社会学入門を意識して書かれているとのこと。 それで確かに、社会学の内容を全く知らなくても分かるように、社会学を説明しようとしている。

 だけど、社会学の基本を説明するために、コンピューターの仕組みだとか絵画史(キュビズム、シュルレアリスムなど)だとか、社会学以外のものではある程度の知識がないときつくなっている。 こんなの、小学生に算数を教えるのに英語を使うみたいなものだ。


 そんなわけで、決して「社会学入門」にはなっていない本。

 水谷修 『夜回り先生(小学館文庫、2009年)


 闇の世界に落ちていく子供たちを救う行動を続ける、以前NHKなどでも取り上げられた教師の本。

 本としては内容すかすかだけど、彼の行ってきた自らの犠牲をいとわない行動はすごい。

 その行動の前ではただただひれ伏すしかないような気持ちになる。


 指導者や教育者の世界には色々なカリスマがいるけど、暑苦しくなくて好きなタイプのカリスマ。

 

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