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谷岡一郎『「社会調査」のウソ――リサーチ・リテラシーのすすめ』 (文春新書、2000年)
世論調査などの様々な「社会調査」は、世の中に数え切れないほどたくさん存在していて、毎日一つ以上は必ず目にするくらい浸透している。
しかし、そのほとんどは統計の初歩的な方法論や手続きさえも踏まえていない、誤った情報や誤ったメッセージを発するだけの「ゴミ」であると著者は嘆く。しかも、「ゴミ」は他のところで(「ゴミ」と知ってか知らずか)利用されることで更なる「ゴミ」を生み出していく。
この本では、実際に世の中に出された「ゴミ」の実例を実名で紹介しながら、「社会調査」に騙されないためのチェックポイントを分かりやすく教えてくれている。大事なところではキーワード的な専門用語(キャリーオーバー効果とか、強制的選択とか)を出してくれているから、要点がとても掴みやすい。
実例としては国の官庁や研究者などのものも挙げられているが、特に遡上に載せられるのは朝日や読売などの大手新聞によるものである。自分は、普段から新聞に載っている各種調査のほとんどを「話半分以下」にしか信じていないけど、改めて見るとやっぱり酷い。
特に致命的だと思うのが、マスコミの人間にリサーチ・リテラシーがないために、官庁や民間企業の行った調査結果をそのまま鵜呑みにして報道し、“権力”のチェックどころか、“権力”の提灯持ちをしてしまっていること。
ちなみに、リサーチ・リテラシーは今では確かに重要だけど、論理的思考力と想像力があれば、この考え方自体にはある程度近づけるから、これを高校で教えるべきだとは思わない。「社会生活を営む上で重要だけど知らないと全く分からないもの」こそを高校では教えるべきだ。法教育とか。
ただ、リサーチ・リテラシーは学問をする際の初歩的な知識なのだから、「大卒」(人文系は除いていい)という肩書きを持っている人のほとんどが身に付けているようになるべきだとは思う。現実からは程遠い目標だが。