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 殿岡駿星 『狭山事件の真犯人(星雲社、2005年)
 
 
 冤罪を強く疑われつつも未だに何の進展も見せない1963年に起きた狭山事件について、犯人とされたままの石川一雄さん(「さん」を付けることがかなり一般化しているため、このブログでは例外的だが「さん」付けにした。)の無実を改めて証明しつつも、真犯人を明らかにしようとした、元新聞記者による推理小説風のドキュメンタリー。設定は全て事実のまま、一部に仮名を使う程度の変更で、真犯人も限りなく直接に近い間接的な方法で大胆に名指ししている。(だが、どうしても証拠はないために推理に止まるとしている。)なお、この本は1990年に書かれて出版された本の在庫切れに伴い、改めて若干の書き直しをして出されたもの。

 狭山事件は、犯人とされた石川さんが被差別部落の出身者ということもあり、その“闘争”にはかなり偏狭で過激な団体が関与していたりする。そのため、関連報道や関連文献は、かなり注意深く、疑い深く見ているが、石川さんが冤罪であることは、左翼だろうが、右翼だろうが、ノンポリ市民だろうが、誰であろうが同意するのではないかと思う。子供じみた言葉遊びをする非論理的な裁判所、未だに捜査資料を秘匿する検察・・・、司法という国の根幹にこんな汚点を抱えていては、日本を自由民主主義を基調とする近代国家だと誇ることは憚られる。
 
 
 それで、この本の推理だが、やはりこの本を読む限りは、細かいところでは違うと思いつつも、重要なトリックの解明や真犯人については当たっているのではないかと思えてしまう。ただ、これについてはあまり知識がないだけに他の本なども読まないと何とも言えない。
 
 
 また、この本では最初に狭山事件の概要が説明され、その後に記者の推理として真犯人が追求される。裏表紙に現場の地図やイラストが入れられていて読者の理解を助ける努力はされているのだが、いかんせん、繰り返しの多用など文章とその構成に難があるように思えてしまった。もちろん、丁寧な説明と緻密な推理の裏返しなのだろうが。
 
 
 しかし、石川さんの無実が分かっているだけだと思っていた狭山事件についての追究が、真犯人を推測するところまで進んでいたとは知らなかった。逆にいえば、ここまで究明が進んでいて裁判所の判断が頑固に変わらない理由は一体何なんだろうか。
 
 
 とにもかくにも、真犯人についての証拠がない今現在でも確実に言えることは、筆者が「あとがき」で書いている以下の文に上手くまとめられているように感じる。

あえて真犯人を追及するべきでない、という考え方があるのは承知しているが、しかし四十年以上も罪人として苦しめられている一人の罪なき人が耐えていることを思えば、無罪を証明するために事件の真相を求めることは決して間違っているとは思わない。雑木林内の血痕調査結果など検察が明らかにしない全証拠の開示をはじめ、事件関係者は石川さんの無実を証明するために知っていることはすべて隠すべきでないと考えるからだ。また、本書における推理に対し、不当だと思われる方は遠慮なく申し出ていただきたい。反省すべき点があれば改めて一層真相に迫るものにしたいと考える。
 日本の司法界は少しずつだが改革されつつある。国民が裁判に参加する裁判員制度の導入もその一つだろう。
 (中略)石川さんが再逮捕後の厳しい取り調べでウソの自白をさせられたことを思えば、別件逮捕、再逮捕という長期の代用監獄での拘留はえん罪の温床となっている。また、石川さんが主張しているように、二審の寺尾裁判長が自ら現地調査もしないで、十年に及ぶ再審の結果を机上の空論で判断してしまったのは許せることではない。
 裁判所は一日も早く石川さんの再審開始、全証拠の開示を決定するべきだと訴える。(pp300-301)

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