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 岩崎育夫 『物語 シンガポールの歴史(中公新書、2013年)

 

 東南アジアにありながらアジアで最も豊かな国で、マレーシアの先端にありながら華人の国で、ごみを捨てるだけで逮捕される、マーライオンの国。

 しかし、なぜそうなったのかを全く知らない。

 そんな自分の無知を、かなりの程度この本は解決してくれた。

 依然、謎のままなのは、ごみを捨てるだけで逮捕されたり、ガムを街中で食べるだけでも逮捕されるようなモラルに厳しい国になぜなったのか、という点だけだ。



 赤道すぐそばのジャングルの小さな島を19世紀にイギリスが植民地にした。そこに出稼ぎのために中国から人がやって来た。インドからもやって来た。マレー人もいた。こうしてイギリス人、華人、マレー人、インド人からなる国ができあがった。割合として少なかったイギリス人が使用していた英語が主に使われるようになった歴史も本書には書かれている。

 太平洋戦争中は日本が占領していた時期もあった。

 そして、戦後。右往左往した後、独立国家となった。その頃から活躍しつつあったのが、日本でも馴染み深いリー・クアンユーだ。彼の時代はシンガポールが急激に経済発展していく時代ともかぶっている。筆者は、経済発展は開発独裁が成功したためだと分析している。それは国民の政治的自由を制限し、社会主義国のような経済統制さえも含むものである。また、堂々とエリートを選別し彼らを国家官僚とする仕組みを作るまでの徹底ぶりだ。イギリスの影響を受け、英語を話す、経済的に豊かな国という面からすると、意外な面があることに驚かされる。とはいえ、アジア的と言えば、まさにアジア的だ。

 経済発展に関しては、本書は経済学者の本ではないから当然だが、別の分析もあるだろうし、もっと詳細な分析を読んでみたいという気持ちになる。

 ただ、欧米を念頭に置いた、民主主義と資本主義を安易に結びつける議論に対して、シンガポールが強烈な反証になっていることは間違いない。そして、その発展の仕方が他のアジア諸国に見られる開発独裁的な手法であったことは興味深い。その先に欧米とは別の政治社会、経済社会のあり方が見えてきそうだからだ。

 ちなみに、日本もそのアジアの一団に属するのかそうでないのかは単純に結論付けられる問題ではない。戦後、優秀な官僚がけん引して高度成長を実現したというかつての主張は今や主流派ではない。だからといって、資本主義の徹底、つまり、強烈な競争が発展の要因かというとそういうわけでもなさそうだ。となると、どう考えればいいのだろうか・・・。


 
 話が逸れたが、そんな「アジア」について考える第一歩として、または観光に行くなら知っておこうと思ったとき、その基本知識が実にバランスよくまとめられている本書は秀作だと思う。



 
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