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 宮台真司 『世紀末の作法――終ワリナキ日常ヲ生キル知恵(角川文庫、2000年)
 
 
 90年代の中頃から終わり頃を中心に、社会問題に興味を持っている人は皆、宮台真司を読んでいた。会話をしていてふと出てくるちょっとした単語であるとか主張であるとかに、「あー、この人も宮台読んでるな(ニヤリ)」と感じさせたものだ。もちろん、中には宮台に心酔しすぎた「ミヤダイくん」を生み出しもしたんだけど。せっかくだから言っておくと、「ミヤダイくん」って、たいてい、宮台本人ほどのすばらしい能力を持ってない人が、宮台の考えを自分にそのまま移植することで万能感、「俺って頭いいだろ」感を感じて悦に浸っていただけだから、社会で生きていく中で、いずれ、宮台本人と自分とのそもそもの(いろんな)能力や感性の致命的な差に気付いて絶望してるんじゃないかと思うんだけどどうだろう? そもそも宮台を熱心に読んでしまう時点で、意味とか物語にすがらないマッタリした生き方ができてるとは言えないし。

 まあ、そんなイタ極端な人たちは置いといて、ともかく、ちょっと前はみんな宮台を読んでいた。その頃の宮台は、ブルセラ女子高生・援交女子高生の生き方を、「成熟した近代」という「終わりなき日常」があるだけの新しい時代に適応した生き方だとして賞賛していた。そして、意味、物語、道徳、歴史、偏差値、学歴、肩書き、社会的使命などにすがっている(主に)高学歴の男子(若者も大人も)の実存を見抜き、否定していた。いや、ただ否定するに留まらず、ある種、イデオロギー暴露をすることで、そういう人たちを辱(はずかし)めていた。(説教して安心するオヤジ!、歴史に慰撫されるオヤジ!etc.) それらは、鋭い心理的な洞察と冷酷なまでの現実主義的な分析に裏付けられていて、かなり説得的でもあった。それだけに、自分の内面(実存)に耳を傾けることなしに、もしくは、冷静に現実主義的な分析をすることなしに、安直に、「女子高生の性交を禁止しろ!(淫行防止条例を制定しろ!)」だとか「日本の悪いところが書いてある教科書は使うな!」だとかいった道徳的、自由主義史観(自慰史観ともいう)的主張を表立って語ることは(それなりに)はばかられた。

 翻って今の日本を見るに、宮台による抑止効果が全くなくなったかのように、実存的な主張を堂々とする人が増えたように見える。(ネットの浸透がそう見えさせているだけかもしれないし、社会のアトム化のさらなる進行によってそういう人や雑誌などの主張がより過激化( ←こういう現象をgroup polarization=集団分極化という)したためにそう見えるだけかもしれない。 ) そういう人たちの、主張の帰結への現実的な配慮の完全なる欠如や、感情やら道徳やらを主張の根拠にして全くはばからない態度を見るにつけ、彼らが宮台を読んでいない(もしくは読んだけど忘れた、あるいは読んだけど理解できなかった)であろうことは容易に推測される。( 道徳的主張をしてはばからない一人である弁護士の橋下徹は「宮台を読んでも理解できなかった」と宮崎哲弥に言っていたと宮崎がある対談で明かしている。)

 この背景には、宮台自身が主張の焦点を変えているというのもある。すなわち、「終わりなき日常を生きろ」という主張から「アイロニーとしての天皇」だとか何だとか、議論の主戦場もアプローチも変えた。彼なりの戦略に基づいてはいるのだろうけど、個人的には成功してるとも思えないし、その意図もいまいちよく分からない。

 また他方で、社会が変わったというのもある。すなわち、デフレ不況が深刻化して、若者の問題や関心が実存的な問題からそれ以前の経済的な問題へと移行した。その結果、宮台は捨てられ、稲葉振一郎をはじめとするリフレ派と言われる経済学で経済を語れる人たちが持てはやされる事態が生じた。

 そんなわけで、実存という視点からイデオロギー暴露する宮台は忘れられ、実存から道徳や歴史や政治を語る人が増殖した。(安倍先生による首相になる前となった後の豹変ぶりなんてまさに、彼が以前は実存的な理由からイデオロギー的主張をしていた端的な証拠だよね。)

 そんな状況なら、単純に過去の宮台を呼び起こせばよくね、ということで久しぶりにこの本を読んだ。(おー、なんという長い前フリ!)

 久しぶりに読んで、今の世にはびこっている社会問題についての各種発言への批判としてもモロに有効だし、その他にも実に色々と思考が促された。久しぶりに刺激的でおもしろい読書体験だった。

 そんなわけで言いたいことはいろいろあるけど、そん中から一つ。

 やっぱり、「まったり革命」は無理だ。もしくは無意味だ。そんなのできるの(もしくは有意味なの)は、ほんの一部の人だけだ。

 批判はいくつかの観点からできる。

 ということで、いろいろ批判していこうと思ったんだけど、あまりに長くなるし、若干宮台の主張で一貫した整理が出来ないところがあるから、今回はここで止めておこうと思う。(!w)

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