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by ST25
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 大村敦志 『父と娘の法入門(岩波ジュニア新書、2005年)
 
 
 大学生向けの「法学教育」ではなく、中高生向けの「法教育」を目的として書かれた民法学者による「法入門」の書。

 この著者による『消費者法』をかつて読んだことがあり、法学者にしては珍しく教養主義的な臭いがあったのを覚えていて、そんなことのために今回、本書を手に取ってみた。

 ちなみに、結果から言うと、この著者の教養主義的志向は滞在経験のあるフランス仕込みのものであるようだ。実際、著者はフランスの市民教育の本を翻訳したりもしているとのことである。
 
 
 それで、本書の内容だが、身近なものである動物を一つの参照基準として取り上げながら、社会における法の役割や意義を父と娘の対話形式で伝えている。人の人たるゆえんから、年齢の計算法やペットの飼い方まで、一見法律とは無関係に存在していそうなものの法的な基盤の存在を明らかにしている。また、民法90条(公序良俗)、709条(不法行為による損害賠償)といった基本条文も取り入れられている。他にも、理念的な問題である障害者基本法、補助犬法、児童虐待防止法、学校教育法(11条・学生生徒等の懲戒)なども紹介されている。

 それで、果たして、中高生に社会における法の役割や意義を理解させることに成功しているか?

 「半ば成功し、半ば失敗している」というのが自分の感想だ。

 成功しているのは、法が社会のあらゆるところに関わっているのを認識させる点においてであり、成功していないのは、法が社会を存立せしめていることの重要性を理解させる点においてである、と考える。

 入門の書である本書に、法の支配を認識させることと、その重要性を理解させることの両方を課すのは酷であるかもしれない。しかし、日本人であれば誰でも、生まれたときから権利を持つことができるという意味の民法3条1項に「これはすごいこと」と感動し、「これはすごいことです。驚いて下さい」と学生たちに言うことがある(p77)という著者であればこそ、期待したいところではあった。
 
 
 しかしながら、いずれにしても、中高生に法教育を行うことには大賛成である。むしろ、行わない理由が分からない。だから、子供が法律を知ってしまったら大人たちが困るからなのかと勘ぐったりもしてしまう。

 ただ、個人的には、少なくとも高校生くらいなら、こういう本よりは民法総則の簡単な教科書の方がより効率的で良いと思ってしまうのだが、どうだろうか。中学生くらいならこれで良いという気もするが。



〈前のブログでのコメント〉
義務教育の目的として“集団生活”を挙げる人は多いですが、「集団」ということはすでに一つの社会なわけで、そこにおいて憲法の原理や法的な考え方が全ての基礎として浸透させられるべきなのは、考えてみれば当然のことなのですが・・・。どうも、「子供」とか「教育」とかいうだけで、大人たちは社会とは離れて自分勝手な価値観を押し付けたがるので困りものです。

「個人の尊重が足りないから教育は荒廃した」という意見は一見過激なようですが、特にマクロに教育制度を見ると当たっているように思います。
commented by Stud.@Webmaster
posted at 2006/01/07 02:40
そうそう法教育は矮小化されて教えられそうなのがイヤなんです。弁護士とかがたまに授業して矮小化されるなんては望ましくないですよね。
ルールは合意によって形成されまた合意によってかえられる事を広い視野で徹底すべきだと思います。民主主義思想教育ではなく民主主義教育。政治思想教育ではなく政治教育。

教職を取得するため憲法か法学は必須ですが暴力教師などの例外を除いても先生から個人の尊重とは何ぞやと教えてもらった記憶はないです。
僕の持論は現代の教育は個人を尊重したから荒廃したのではなく個人を尊重してないからダメなんだというものなんです。
commented by やっさん
posted at 2006/01/06 20:32
憲法に関しては「社会」の授業で結構時間が割かれているのに内容が悪いです。基本的な最低限の憲法の原理を理解している先生がどれだけいることか・・・。(暴力教師も、体罰擁護教師もいる現状で。) ただ、民法や刑法の基本も教えるべきだと思います。要は、「市民」を作る(=社会(のルールの中)で生きていける人を作る)という観点から考えるべきで、そうすると法教育は絶対に外せないということです。「裁判員制度のため」と、矮小化したくないところです。
commented by Stud.◆2FSkeT6g
posted at 2006/01/06 01:53
法教育賛成です。
憲法の原理、個人の尊重や自由をもっと教え込むべきだと思いますが。
commented by やっさん
posted at 2006/01/05 22:42
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