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山形浩生 『新教養としてのパソコン入門』 (アスキー新書、2007年)
パソコンを自分である程度使いこなせる人と、簡単な機能しか使えなくてトラブルでも発生しようものなら完全にお手上げな人および全くのパソコン素人との間には、“感覚”や“パソコンというもののイメージ”において、お互い異世界に住んでいるかと思うほど隔絶の感がある。
この隔たりを埋めようと、コンピュータ(=パソコン)が分からない人に“分かってる人”的なコンピュータのメカニズムの理解を与えようと書かれたのがこの本。
説明に際しては、スタンレー・キューブリックの映画『2001年:宇宙の旅』とかスタニスワフ・レムの小説「GOLEM 14」(『虚数』国書刊行会・1998年、所収)とかいった(著者お得意の)SFを思い起こさせる、「コンピュータに気持ちがある」という想定で説明がなされている。
この現状認識とその試みの方向性自体は素晴らしいけど、いかんせん、それが成功しているようには思えない。
全体的に、説明が浅かったり無理な例え話で済まされていたりで、おそらく、“パソコン音痴”の人がこの本を読んでも、あまり理解できなくて「よく分からない」ままだと思われる。
それに、パソコンが分からない人というのは女性と年配の男性に多いと思われるから、下ネタや罵倒が満載(?)の“山形節”はこの手の本には適してないと思う。
ある程度コンピュータのことを分かっている方に入る(と自負している)自分には、過去におけるメーカー間の競争とその名残りの話とか昔のユーザーの苦労話とかの歴史のところは少しは楽しめた。
それから何より、プロトコルの重要性の話のところで持ち出されているアヘン戦争に関する逸話(p142)に爆笑した。 (※出てくるのは「著者注」でなんだけど、この部分は著者のHPに掲載されている元の連載の全文には載ってない。)
これで満足。