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高橋昌一郎 『理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性』 (講談社現代新書、2008年)
理性の限界に至っていることが理性的に分かっている話を様々な学問分野から持ってきて対話形式で説明している本。
具体的には、「選択の限界」としてコンドルセの投票のパラドクスやアローの不可能性定理や囚人のジレンマを、「科学の限界」としてハイゼンベルクの不確定性原理やEPRパラドクス(量子論)を、「知識の限界」としてゲーデルの不完全性定理や神の非存在論などを、取り上げている。
この手の「理性・論理の限界」の話を1冊で読めてしまうのはありがたい。
これも、社会科学から自然科学、数学まで、「理性・論理の限界」として括れる話を全て語れる著者のおかげ。ちなみに、そんな著者は哲学者・論理学者。
対話形式も、“先生と生徒”みたいな単純なありがちな形ではなくて、色々な分野の学者、会社員、学生、運動選手といった多彩な顔ぶれが一堂に会していておもしろい。中でも、カント主義者がいい味出してる。
とはいえ、様々な工夫や努力にもかかわらず、全くの初心者がどこまで理解できるかはちょっと怪しい気もする。
というか、自分は、二重スリットをすり抜ける量子論のイメージが分からずじまいだった。文字でいくら説明されても難しいんじゃないかと思う。それから、不完全性定理もついていけないところがいくつかあった。
でも、どれも直感に反する知的興奮を味わえるおもしろい話であって、完全には理解できなくてもその端緒は感じることができる。そして、さらに色々読み進めてみたいという気になる。