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by ST25
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 重松清 『星のかけら(新潮文庫、2013年)

 

 久しぶりに、文庫化されたばかりの重松作品を読んでみた。 もともと雑誌『小学六年生』に連載されていたものに手が加えられている中篇。 とはいえ大人でも楽しめる。


 「去る者は日々に疎し」の言葉のとおり、いなくなってしまった人は、最初は強く心に刻まれて事あるごとに思い出されるものだが、時が経つにつれてその存在感は希薄になってくる。 それは避けがたいことであるし、「忘却」こそ人間に備わっている重要な機能だと唱える論者までいる。 あらゆる強烈な感情とともに生きることは到底不可能だからだ。 

 とはいえ、ふとした瞬間に気付くその「忘却」が寂しかったりするのも事実だ。 この小説では、その寂しい「忘却」を、「忘却」される側の者の登場によって拭い去ってくれる。 天へと昇りし者もまた「忘却」は寂しいのかもしれない。

 交通事故により小学生で命を落とした文(フミ)の登場により、地上において不甲斐なく生きることしかできていない少年たちは変わり始める。 

 であるのだが、この小説のおもしろいところは、不甲斐ない者を大きく前進させてくれる他界した文(フミ)が登場するためには、生ける者が(ほんのちょっとであっても)前へと進む行動を起こさないといけないところだ。 それはまるで、「どうせ忘れることになるのだから自分の力でしっかり生きて行って」という天から見守るものによる温かくも厳しいメッセージであるかのようだ。

 確かに、仲良く私立中学に通うユウキとヤノに、「星のかけら」が登場する隙はないだろう。 奇妙なことだが、この小説のメッセージは、タイトルにもなっている「星のかけら」は必要ない(必要とするべきではない)ということであるかのように思える。 









 
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