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by ST25
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 道尾秀介 『向日葵の咲かない夏(新潮文庫、2009年)

 

 ミステリー小説は言うまでもなく創作された読み物だ。 それならば、どんなトリックが仕掛けられ、どんな現実離れした世界が描かれていても、読み進めながら楽しめれば、それはおもしろい作品と言うべきだろう。

 その点、この小説はおもしろい。

 
 普通のミステリーかと思いきや、いつの間にか現実から離れた別世界へと導かれている。 話が別世界に行っても、その書き方は正常な世界を描いているかのようなとても平然とした書かれ方がされているところも上手い。
 

 首を吊って死んでいたクラスメイトが昆虫になってしまうことなんてほんの小さな仕掛けに過ぎない。

 そして、物語的な仕掛けはただエンターテインメントのためだけのものではない。 そこには人間の精神の特質を表現するという意図が込められている。 アマゾンのレビューでは「気持ち悪い作品」といった印象論が理由づけもなく語られている。 人間は自分の理解できないものに遭遇すると、それを自分流の物語や解釈の中に無理やり押し込んでしまう弱さを持っている。 同時多発テロの陰謀論なんかもその種の現象だろうと思われる。

 人間が自分の思考の中でしか生きられない以上、あらゆることを主観的に自分なりに判断や解釈するしかないところはある。 しかし、様々な意見や作品を経験することで相対化したり、根拠を求めるロジカルな思考を心がけたりすることで多少なりともその短所を和らげることができるだろう。

 独善的な、自分作の物語や自分流の解釈なんて火をつけて燃やしてしまえばいいのだ。






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