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 貴志祐介 『ダークゾーン(上・下)(祥伝社文庫、2013年)

 

 軍艦島がダークゾーンと呼ばれる異世界に変わり、そこで将棋の奨励会員であった主人公とそれを取り巻く人たちが自らの生命を賭して将棋のようなゲーム/戦いを行う。

 「ハリーポッター」にチェスで同じような状況の場面が出てくるのが思い浮かんだ。 ただ、この小説では将棋と全く同じルールではない。

 「解説」で大森望は、この小説オリジナルのルールに関して最初から示されていた可能性がフルに活用され(下巻p337)と書いているけれど、「昇進」の存在や昇進後の戦闘能力などオリジナルのルールが後出しじゃんけんでたくさん出てくる。そのため、読みながら「こういう戦略で行くべきなのでは」と読み手が想像し、それを小説が超えていくという驚きや敗北感が得られず、後から後から出てくるルールに「あぁそうなんだ」と思いながら完全に受け身で読み進めていくしかない。

 「断章」として挟まれる現実での主人公たちの話もそれほど深い話ではない。


 そんなわけで、ゲームの面でも人間の描写の面でもそれほど面白さに感動するようなところのない小説だった。

 何だかんだ最後まで読めてしまったけど。

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