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 池井戸潤 『民王(文春文庫、2013年)

 

 首相をはじめ、国を預かる有力政治家たちが自分の息子や娘と中身だけ入れ替わる事態が発生した。 バカ息子は「未曾有」を「みぞうゆう」と読んだり、泥酔状態で会見をしたり、国政は混乱しだした。

 ぶっ飛んだ設定に、ぶっ飛んだ登場人物たち。 事実とは思えないような日本の現実についての事実とは思えないような一つの仮説なのかとか、世襲議員に対する皮肉なのかとか、下らない話に合わせた下らない茶々をいれながら読み進めた。 力のある作家だけに、現実離れした設定でもスムーズに読み進められた。

 話が進むにつれて、親子が入れ替わることで気付くことが出てくる。 死期を迎える人たちを世話するホスピスで、息子の体をした首相が話を聞く。

自分の死を見つめる人が信じられるのは、真実だけなんです。余命幾ばくもない人にとって、嘘をついて自分をよく見せたり、取り繕ったりすることはなんの意味もありません。 」(p303)

 そうして、自分でなくなって初めて自分とはどういう人間だったのかということに気付く。

 そんなマジメなところもある、軽くて楽しい小説だった。



 
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