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小川洋子 『博士の愛した数式』 (新潮文庫、2005年)
全国の書店員が投票で選んで決めるという「本屋大賞」の第一回受賞作品。その文庫化。「書店員が選ぶ」ということから、もっとエンターテイメント性の強いものか、単純な感動ものかと思っていたが、意外にも、ストーリーはいたって静かで、文学的なおもしろみもある、正統な作品だった。
1975年以降の記憶は80分しかもたない数学の老博士、夫のいないその家政婦、その家政婦の息子、の三人によってつむがれていく物語。
物語には博士の導きによって数字(特に素数)の神秘が出てくる。
「 220の約数の和は284。284の約数の和は220。友愛数だ。滅多に存在しない組合せだよ。フェルマーだってデカルトだって、一組ずつしか見つけられなかった。神の計らいを受けた絆で結ばれ合った数字なんだ。美しいと思わないかい? 君の誕生日と、僕の手首に刻まれた数字が、これほど見事なチェーンでつながり合っているなんて」(p32)
こんな綺麗で落ち着いた進行の中に、湯舟、中込、亀山、パチョレックなど10数年前のプロ野球と江夏豊が出てきて見事なスパイスを効かせている。
また、数学に脇目も振らず熱中する博士が、子供に対しても全身全霊で慈しみをふり注ぐというのも、物語に一味加えるのに役立っている。
こうして、数字の美しさ、時代の古いプロ野球の滑稽さ、博士の子供に対する暖かさ、という様々な要素が見事に混ざり合って、この小説は深みのある作品に仕上がっている。
個人的には、積極的に推そうとまでは思わないが、「“悪くはない”小説」という感想を持った。この著者が1991年に芥川賞を受賞していることと関連して言えば、芥川賞作家なら、これくらいは書いて欲しいと思うような感じの作品だった。
〈前のブログでのコメント〉
- これは失礼。いつもケータイで見せてもらっている子かと思ってしまいました。。。 『老兵は死なず』が文庫化されたのでいかがですか?(笑)
- commented by Stud.◆2FSkeT6g
- posted at 2005/12/07 19:03
- 中三やからこれくらいは読めるよ。
今年はどの本をプレゼントするか今考え中です。 - commented by やっさん
- posted at 2005/12/07 12:48
- 悪くない選択だと自分も思います。多少難しいと思っても子供は意外と読めてしまうものだという気がします。
もし自分が親になることがあるとして、子供にいつどの本を読ませるかという妄想はなかなか楽しいものです。まあ、現実的には親の思い通りには子供は読んでくれないのでしょうが。 - commented by Stud.◆2FSkeT6g
- posted at 2005/12/06 23:23
- これは昨年、僕がいとこにプレゼントした本だよ!
- commented by やっさん
- posted at 2005/12/06 17:19