by ST25
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宮下奈都 『スコーレNo.4』 (光文社文庫、2009年)
1人の平凡な女性の(ささやかながら確かな)成長を描いた小説。
さほど有名ではない筆者の、人物描写・情景描写の力はなかなかのもの。しっかりとした筆力のある作家だと思う。
話は、派手な出来事や劇的な展開があるわけではないけれど、1人の女性が様々な日常の出来事から思考し、気づき、学び、そうして、少しずつ本来の背伸びしない自分やそんな自分の居場所を見つけていく。
例えば、魅かれる男性でいえば、年上の大人、自分とは対照的な性格の同級生、そして、骨董屋の娘である自分と似た感性をもった同僚へと落ち着いている。
そして、その時々の主人公の女性の心情を見事にすくい取って描いてくれているから、物語の静かな世界にどっぷりと浸り、心地よく読み進めることができる。
この作者は、もちろん全く同じではないけれど、小川洋子、三浦しをんといったあたりに比肩しうると思う。そして、やや単線的すぎるきらいのあるストーリーに深みが出れば、芥川賞の候補になってもおかしくない筆力を持っていると思う。(芥川賞を獲れることがどれだけ良いことなのかはおいておいて。)
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