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 奥田英朗 『オリンピックの身代金(上・下)(角川文庫、2011年)

 

 焼け野原から立ち直り、ついに東京オリンピック開催にこぎつけた高度経済成長まっただ中の日本。しかし、華やかな表向きの東京がある一方で、様々な暗い現実がまだそこかしこにあった。そんな中、経済格差や労働者の人権蹂躙など社会の不条理に納得いかない大学院生の島崎が、オリンピック開催を人質に、国に対して身代金を要求する。

 『イン・ザ・プール』などこれまでの奥田英朗のエンターテインメント作品とは違い、コミカルな登場人物が出てくることはなく、淡々と話が進んでいく純粋なミステリー小説。

 この小説では、東京オリンピック時の日本の政治・経済・生活・人々など様々な現実が描かれている。すっかり豊かになった日本で生まれ育った自分のような人間には想像できない当時の日本に、改めて気づかされた。また、北京オリンピックの際に中国の現状を批判・冷笑した日本の人たちに対して鋭く突き刺さる。この点では社会派の小説とも言うことができる。

 しかし、ミステリー小説として見ると、トリック自体はそれほど手の込んだものではなく、主人公は5階から(木の上とはいえ)落ちてもすぐに走れるとか設定に無理があり、話が長い割に(いくつかの視点で同じことを書いていることもあって)話が大して進まないし深まっていかないし、と、完成度はそれほど高くない。それに、最後まで読み通すだけの最低限のおもしろさは辛うじてあるとはいえ、それほどではなく、途中から退屈も感じながら一応最後まで読んでいる状態だった。

 エンターテインメントにするか、社会派にするか、どっちつかずで、おもしろさもなんとなく振りきれない中途半端な小説だった。


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