by ST25
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古屋兎丸 『ライチ☆光クラブ』 (太田出版、2006年)
1980年代の演劇を基にした漫画。
9人の中学生の少年たちが廃墟に秘密基地を作り、一人のリーダーを崇拝する秘密結社のような組織を築いている。そして、汚れた大人を嫌う彼らは、純潔な少女を捕獲するためのロボットを完成させ、一人の少女をさらってきて匿(かくま)うことになる。しかし、裏切り、猜疑心、偏執的な愛、ロボットと少女との交流などのために、組織はバラバラになり、ついに破滅を迎える。
秘密基地、秘密結社というと、欲望の赴くまま極悪非道な行いをし、その果てに破滅へと進んでいくストーリーをまずイメージする。けれど、この漫画では、「汚れなき少女」という最高の目的の達成においては男子中学生らしい妙な倫理観や抑制が効いていて、基地や組織やロボットを作り上げたにもかかわらず、結局それによって何かを成し遂げることなく破滅を迎えている。その慎ましさともどかしさに、自分自身の中学生時代を思い起こさせるような懐かしさを含んだリアリティと、強烈な儚さを感じる。
描写はかなりグロかったりもするけれど、その表面的な激しさが逆に、全てが終わった後の儚さや少年たちの脆さと対照的になっていて、作品の核心をより強く印象付けてくれる。
ちなみに、汚れた大人を嫌った少年たちが結局残虐な行いに走り、彼らが作ったロボットだけが純潔なる少女と心を通わせることができるというのは、少しありきたりな感じがして、ロボットの存在はあまり読後まで強くは印象には残らなかった。
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