by ST25
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伊藤計劃 『ハーモニー [新版]』 (ハヤカワ文庫、2014年)
「大災禍」の後、他者への思いやりに溢れ、健康状態を全て監視し病気になることもない、そんな「ユートピア」を築き上げた人類。感情も健康も自然任せにせず、全てを人工的に管理する。そんな「生府」がコントロールする世界で、その状態に満足できない少女がその世界を破壊しようと試みる。
常日頃、何の疑いもなく正しいと信じられている価値(優しさ、健康など)を徹底することで生じるユートピアではない「ディストピア」。本の中でも出てくる『すばらしき新世界』やミシェル・フーコーといった先達たちの遺産を受け継ぎつつも、脳科学の知見などを用いた独自の哲学的洞察も垣間見ることができる。人間にとって根本となる人間性とは何か?
物語としてのおもしろさと哲学的・SF的洞察のおもしろさが二重に重なりつつ読み進められる読み応えのあるSF小説だった。
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