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 中村文則 『(新潮文庫、2006年)
 
 
 ちょっと前に『悪意の手記』を取り上げた若き芥川賞作家のデビュー作。

 銃を拾い、銃に魅せられ、銃に翻弄されていく男子大学生の物語。

 『悪意の手記』は“人を殺す”ことによって生きる意味を見つけ、充実した生を送れるようになった虚無の若者の話であったが、こちらは“銃を拾う”ことで能動的に生きられるようになった若者の話。

 ただ、「解説」で中島一夫が指摘しているように、銃を拾うことで自由に、能動的に生きられるようになったかと思われた若者は、徐々に、銃に従属させられていってしまう。

 そうして迎えるラストシーンはなかなかおもしろい。
 
 
 いくつかある中で特に気になったのは、主人公の独白調の一人称が「私」であること。そして、親とか友達にも「彼女」とか「彼」とかを用いていること。

 とんがっている大学生が自分のことを「私」と呼ぶというのには違和感を感じる。「彼/彼女」という呼び方も、日常ではあまり使われなく、使われるのは英語の訳でくらいなものなのではなかろうか。
 
 
 
 確かに、他にもデビュー作らしく、話の展開のさせ方とか、人物が持つその時々の判断力の一貫性とか、人物の特異な性格が所与であることとか気になった点はあった。

 けれど、虚無主義(ニヒリズム)でかつ個人主義(エゴイズム)である現代人の困難な生を、極端だけどリアリティを失うことなく描けているという点ではやはり類い稀な感性を感じさせる作家である。

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