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中川翔子 『しょこたん☆ぶろぐ』 (ゴマブックス、2005年)
真鍋かをりと共に日本のブログ界を牽引する中川翔子の「しょこたん☆ぶろぐ」の書籍化。全身明るいピンク色のカバーは買うのに若干の恥ずかしさを催すが、そんなことにひるむ年齢ではもはやない。
さて、注目の内容。メインは、「日常」「お気に入り」「仲間たち」といった項目ごとに分けられたブログの記事。もちろん、全ての記事が掲載されているわけではなく、更新された記事の総数からすれば一部ということになる。ただ、1章の「しょこたんの日常&素顔」はカレンダー形式になっていて、毎日のアップされた記事の数が載っている。細かい心遣いが感じられる。
他の内容は、まず冒頭に、「成分表」「人物相関図」「用語紹介」があり、アクセス数や更新数のデータ、登場人物、“しょこたん語”やマニアックな専門用語が紹介されている。これによって、「しょこたん☆ぶろぐ」の全体像および前提知識が把握できるようになっている。
また、「特別企画」として、しょこたんが神と崇める楳図かずおとの対談が10ページにも渡って収録されている。自分の世界の言葉と自分の感覚で語る(語ろうとする)しょこたんと、そんなしょこたんの意図あるいは才能を少しでも言語化して誉めようとする楳図かずおとの、“半コミュニケーション”もいいのだが、会話の中に出てくるしょこたんの生い立ち・歴史の方が見所だったりする。
他には、コスプレ姿の「グラビア」と「100問100答」と「さいごギザ――(※おわりに)」がある。また、付録として「シール」が付いている。「100問100答」は答えが一行で終わっている項目も結構あり、やや物足りない。ひとえに質問の芸のなさと単調さに原因があると思われる。
以上で1300円(+税)。ちなみに、同じ値段の真鍋かをりのブログ本とは違って全ページ、カラーの作りになっている。
この本を読んで改めて、中川翔子の頭の中にはかなり特異な世界が完全に形作られているということを感じた。ここまで変わった世界を、小倉優子とは違って、これだけ“天然に”持っているというのはとても貴重だ。
そして、これだけ人とは違ったおもしろい世界を持ったしょこたんだからこそ、ブログの書籍化にも意味が出てくる。
つまり、一つ一つの記事での常人には思いもよらない、意表を突いた、発言や言葉使いや感性の新鮮さを楽しむだけでなく、それら一つ一つの背後に存在する“中川翔子ワールド”を感じ、探し、考えてみるという知的な楽しみがあるのだ。そして、それは、一気にまとめてしょこたんの文章や発言を読むことによってより一層促進されるタイプの営みなのである。(この意味で、「しょこたん☆ぶろぐ」を読み解くという行為は知的な行為なのである!)
この点、真鍋かをりのブログは一つ一つの記事がよく練られ、場合によっては「ひとつの言葉を選ぶのに何十分も」かけて書かれていて、“おもしろさ”や“完成度”という点では圧倒的でも、“その文章を純粋に読んで純粋に楽しむ”以上の楽しみは見出しにくい。深みがないと言ってもいいかもしれない。
逆に、しょこたんの場合、「文章を打つ最中はだいたい何も考えてなくて、無意識で瞬間に脳ミソに思い浮かんだことをタレ流すのみ」であるがゆえに、“しょこたんワールド”を解明するという楽しみを生むことになっている。(もちろん、その世界がおもしろいからこそ成り立つのだが。)
さて、そんなわけで、中川翔子のブログ本は価値のあるものになっているのだが、難点が一つある。それは、しょこたんの文章や絵のセンスが引くくらいに高いこと。そして、しょこたん自身、意識することなく全面的にそれに頼っていること。
これは、しょこたんの文を読み応援する側の存在意義を低めることになる。言わば、「自分が応援しなくてもしょこたん自身のセンスでやっていける」と、感じさせるということだ。もちろん現時点では、ファンレターに返事を書いたり、イベントがあれば参加を促したり、はよくしている。ただ、この種のことがしょこたんの中で占める重要性はそこまで高くないように思えるだけに、今後いかに読者・ファンを巻き込むことができるかが生命線になるように思われる。
さて最後に、「しょこたん☆ぶろぐ」の登場人物の中でも自分がとりわけ応援・期待している喜屋武ちあきと小明のこの本での扱いについて。二人とも数ページを割かれて自身が登場した記事が集められている。そして、そこでは、それなりにそれぞれの特色が出た発言をしていたりする。ただ、やはり記事をそのまま転載しただけではこの本によって更なる飛躍を期待することは難しい。残念。ただ、「しょこたん☆ぶろぐ」によって知名度は間違いなく上がっているだけに、可能性は開かれている。二人がどこか主要6(5?)チャンネルのテレビに出る瞬間を想像するだけで胸が高鳴るのだが・・・。