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キャシー・アッカー 『血みどろ臓物ハイスクール』 (渡辺佐智江訳/白水社、1992年)
「 ポストモダン・パンク作家、また稀代のアウトロー作家として欧米ではすでに熱い支持を獲得 」( 著者略歴より )している女性作家キャシー・アッカーの1984年発表の代表作。
すげー!
アッカーもすげーが、訳者の渡辺佐智江もすげい。
この作品の前では、金原ひとみの「蛇にピアス」なんて、かわいい優等生的お作文にしか見えない。( まあ、もともと金原ひとみの作品の結末は優等生的ではあるのだけど。)
何がすごいかと言うと、色々すごい。
まず、何を書いてるかというと、「 我々の心の中にくすぶる狂気と孤独と愛と憎悪の混沌 」( 訳者あとがきより )。
それが、一人の10代前半の女の子ジェニーが、父親と何の道徳的くびきもなく恋愛・性交したり、ペルシア語を勉強したり、現職大統領の性癖を明かしたり、読書感想文を書いたり、作家ジャン・ジュネと放浪したりする中で描かれていく。
その方法も、普通の小説もあれば、独白調もあり、童話もあり、パロディもあり、戯曲もあり、章全体が詩なのもあり、と自由奔放。( もちろん、性的言葉も頻出。)
文の前後の脈絡がないのは当たり前。
でも、それでも主人公の気持ちの流れがすごくよく分かるのだからすごい。
まさに「 我々の心の中にくすぶる狂気と孤独と愛と憎悪の混沌 」が表現されているのだ。
「なんでそんなナンセンスなものがきちんと何らかの感情を描きえているのか?」( 素人(特に若者)が勢いに任せてただ適当に言葉を書き付けただけではこうはならない)、については一冊を一回読んだだけではまだ分からない。
他の作品も読んでみたい。
けど、そんなキャシー・アッカーの作品が軒並み絶版で、古本屋か図書館でしか手に取れず、古本屋や図書館でさえもそんなにいっぱいあるわけではない状況というのは残念だ。
それにしても、こんな青くて若くて欲動全開の魂の渇きを、女性が描きえて、女性が訳しえたというのは衝撃。
※ 言うまでもなく良い子は読んじゃダメ。