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 早野透 『田中角栄--戦後日本の悲しき自画像(中公新書、2012年)

 

 新聞記者として田中角栄を追ってきた著者が、田中角栄の生い立ちから死去までを辿った本。

 生まれや政治家になる前の話から首相になってからの話まで、どこかだけを多く描いているのではなく、角栄の人生の歩みのスピードに寄り添いながら角栄の人生を通覧している。 今でも評価の大きく分かれる人物なだけに、その点、バランスもあり、偏ってもいなくて好感を持って読み進められる。

 そこで描かれる人物像は、いかにも「大物」の典型のようなもの。 細かいことには目もくれず、目的のためには手段を選ばず、良いと思ったら即実行するなど。 抽象的な倫理やら理論やら思想やらとは無縁である。 まさに戦後の世の中から体一つで建設会社を作り生き延びてきた人物らしい。

 翻って現代の政治は、実に現実感、現場経験の希薄なものとなっている。 それは政治家しかり、国民しかり。 政治に関わる必要がないというのは良いことでもある。 ただ、そういう環境で生きてきた人が政治家になり、有権者になって、政治を決めていくというのは恐ろしいことだ。

 その一方で、増田悦佐が『高度経済成長は復活できる』で書いている角栄の「日本列島改造論」的な経済・国土政策の結果、日本経済が低成長へと至ったという統計データに基づく分析もあり、抽象的な視覚がすべて不要ということももちろんない。

 そんな2つの視点から考えると、著者が「あとがき」で書いているいま、日本政治を見ると、国家像を見失い、技術主義に陥り、ポピュリズムが跋扈する (p396)という言葉は、2つの視点が混ざって包括的になりすぎていて、角栄からの教訓を生かし切れないものだ。

 「友愛」、「生活が第一」、「税と社会保障の一体改革」、「戦後レジームからの脱却」など抽象的な主張が跋扈する今の政治を見るに、角栄の現場主義、現実主義はとても大事な資質、視点だと思う。


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