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 小口日出彦 『情報参謀(講談社現代新書、2016年)

 

 著者は情報コンサルタント会社を率いている民間人。自民党が下野した2009年から参院選に勝利して政権を奪還した2013年まで、自民党にメディアのマスデータを提供し、そのデータを基にした分析・助言も党の広報担当者の会議などで行った。その過程を綴った本。

 著者が率いる情報会社が取得している情報は、テレビや新聞などが何についてどれくらいどのように報道しているかを定量化したものなどである。その情報は24時間、スタッフがテレビなどを視聴し続けることによって獲得するなどアナログなものもある。もちろん、YouTubeやTwitterなどソーシャルメディアのマスデータも収集している。

 著者は、平井卓也、茂木敏充、小池百合子、世耕弘成といった自民党議員とともにそうした情報を活用していった。



 国民からの信を基に活動する議員にとって世論を正確に知ることはとても大事なことだ。したがって、テレビの報道を定量的に把握しているデータなどを知れることはとても有意義なことだ。そして実際、そのデータが政治の現場において有効な判断材料となることは、本書でも描かれているとおり、多いだろう。

 ただし、この本で描かれているのは、あくまで「情報に動かされる人間」であって、「情報を動かす人間」ではない。本書のタイトルからすると、裏で情報を操作したり、ライバルの諜報活動をしたり、ということを思い描く人もいるかもしれないが、そういうことは全くない。あくまで、「マスデータを参考にして行動した記録」に過ぎない。

 では、具体的にどのようなことを行ったのか。いくつか挙げてみる。ワールドカップ日本戦のテレビ中継で自民党のCMを流した。自民党のネット放送局を立ち上げた。自民党総裁とのツイッター対話集会を開いた。参院選の自民党全候補者にiPadを支給して情報を逐一提供した。

 これらはどれも、無いよりはあったほうが良かったのだろうけど、というものばかりだ。

 本書の問題点は、マスデータを政治に持ち込んだことがどれだけ意義があったのかが明らかではないということだ。通読した限り、世論の大勢に影響を及ぼすこともないし、選挙結果の大勢に影響を及ぼすこともないように感じる。

 本書の帯には「自民党、政権奪還の深層」と赤字で書かれているけれど、これは過大評価だと思う。そんなことを感じた本。



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