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 半藤一利 『戦う石橋湛山(ちくま文庫、2019年)

 
 石橋湛山は、戦後、首相を務めるも病気により2カ月で辞職を余儀なくされた。そのため存在感の薄い首相となってしまっている。

 しかし、石橋湛山の真価は戦後の政治家としての仕事ではなく、戦中の勇敢かつ慧眼に基づく言論活動にある。絶対権力を有していた軍部の大日本主義を批判し、一貫して小日本主義を主張した。しかも、その主張は冷静でプラクティカルな思考に基礎を置いている。

 本書は1995年に書かれたものの「新装版」の文庫化だ。筆者はもともと「戦前の日本ジャーナリズム」を書くことを意図していたため、石橋湛山の生涯を追ったものではない。しかし、それでも石橋湛山の最も熱い時期の活動は生き生きと描かれている。



 大勢の意見は時として王を打倒し、民主主義を導入させ、華々しい進化をもたらす。しかし、大勢の意見が常に正しいとは限らない。それは逆に独裁者を賛美し、大虐殺を肯定し、悲惨かつ無意味な戦争を引き起こしたりもする。

 「時代の空気」や「メディアによる煽動」に流されることなく冷静な思考と謙虚な研鑽(学び)を実践できる「石橋湛山」たりたいものだ。


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