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 曽我謙悟 『日本の地方政府(中公新書、2019年)

 
【概要】
 地方公共団体を1つの政治主体である「地方政府」ととらえ、その様々な側面を包括的に分析・説明している。地方政府内のしくみから、選挙制度、地方政府間の関係や中央政府との関係などだ。いわば、地方公共団体を政治学的にとらえた教科書的な本だと言える。

【著者】
 著者は行政学や現代日本政治を専門とする政治学者。代表作は『ゲームとしての官僚制』。この著書からもわかるとおり、数学を使うなどする科学的な政治学を志向する。この学問的姿勢が本書を客観的なものにしている。

【意義】
 上記の通りではあるが、まず何より、客観的な記述・分析が貫かれているところだ。地方自治の分野は政治学に比べると科学的な志向性が弱い傾向にある。したがって、中央政府を批判して地方自治体を無批判に称賛・擁護するものも多い。あるいは、地方自治体への批判的な考察が弱いものが多い。その点、学問的な誠実性のある本書は、地方自治について知りたい人向けの入門書として信頼できる。

 教科書的な本とは言え、平凡な切り口で網羅的に語っているわけではない。その特徴は政治学的な視点だ。首長や議会と政党との関係に多くの紙幅を割いていたり、中央・地方関係をそれぞれのアクターの権力関係として捉えていたり。

【欠点】
 読み物としてのおもしろさに欠ける。地方自治にもともと相当の興味を持っているものならよいが、「ちょっと読んでみようかな」、「全くわからない分野だけど勉強してみようかな」といった読者にとっては読み通すのはなかなかの苦行になるのではないかと思える。

【総括】
 その分野の信頼できる著者による、昔ながらの重厚でまじめな新書。政治学的な視点での新しい(と思う)切り口も多くて問題提起的でもあり、行政学・地方自治を学ぼうとする大学1年生あたりには最適な教科書となる。


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