by ST25
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内田貴 『民法改正』 (ちくま新書、2011年)
主な方向性としては、「わかりやすさ」や「明文化」、あるいは、「市民のための民法」、「国際競争の中の民法」といったものが挙げられている。これらは大義としても否定しがたいものだけど、それらが一線の民法学者によって具体的な事例・改正箇所として示されるととても説得力がある。
法実務(あるいは法解釈学)の世界では、ある程度結論ありきで、それを後付的に条文と結びつけるという側面がある。それだけに、実務家は今のままでも問題ないという意見に傾きがちだ。けれど、逆に言えば、変えたら変えたでまた上手くやっていくということでもある。それならば、大義に勝る改正推進派に分がある。
裁判員制度、法科大学院と、法に関わる制度の大改革がここのところ相次いだ。その中でも特に法科大学院制度は、その成否はまだ時間が経ってみないと分からないとはいえ、司法試験合格率が当初の見積もり通りにいかなかったりと、やや怪しい雲行きだ。そして、法科大学院制度への移行の際には佐藤幸治らの議論の拙速さがしばしば指摘されていた。(もちろん最終的な判断は立法権を持つ国会議員がしたわけだけど。) それと比べると、今回の民法改正は、まだ早い段階から論点を説明するこのような一般向けの本が出たり、またその内容も説得的であったりと、信頼できる。
著名な著者で、出版社の協力があって初めて成り立つものではあるが、民主的な立法過程として望ましいとも思った。
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