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by ST25
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 池内了 『疑似科学入門(岩波新書、2008年)
 
 
 疑似科学の種類やメカニズムを概説した本。

 初心者には不親切で難しめ、多少でも知ってる人には浅くて物足りない。

 一応、この分野の先達であるカール・セーガン、マーチン・ガートナーの日本版たらんことを目指し、なおかつ、地球温暖化のような複雑で科学的に依然不確定なものまで「疑似科学」に含めることに存在意義を見出そうとしているようではあるけれど、成功してるようには思えず、大して意義・おもしろさは感じられない。

 そして何より、社会問題に関して語るところ(あちこちにある)で連発される、(「最近の若者は~」的)道徳的説教や、(教条左翼的)“擬似社会科学的俗説”には辟易する。疑似科学を批判する本においてあるまじき態度。

 いくつか例示しておこう。

電車に乗れば携帯電話をマナーモードにすることが推奨される。スイッチを切るのではなく、音が出ないだけで受信可能な状態にするのだ。マナーとして道徳心の発揮を求めており、乗客の多くもそれに従っている。それはそれで良いことのように見えるが、道徳を(マナーモードという)技術によって代行される事態が進行しているとも言える。道徳を人間関係のなかで身につけていくのではなく、技術力によって遵守させようとするのだ。
 (中略)
 この類の、道徳を代行してくれる技術はこれからも数多く開発されていくだろう。すでに、トイレ使用後に流れる洗浄水、自動的に水の止まる蛇口、人を察知すれば点灯する照明、携帯電話を使えなくする音楽ホール、自動消火するガスコンロなど、実に多くの製品が出回っている。それらは、本来人間の手で操作していたのだが、汚したり、つけっぱなしにしたり、事故を起こしたりしたものだから、技術によって代行しようというわけだ。
 便利になったのは事実だが、「お任せ」体質がはびこり人間はますます横着になっていくことも確実である。 (p96-97)

 「ゲーム脳」を批判してる同じ本の中の記述とはとても思えない。全く証拠さえ示そうとしていないあたりは、よりトンデモナイと言えるかもしれない。そもそも、人間の安全とか実質的なメリットより道徳を重んじる問題提起自体がどうかと思うけど。

文部科学省が全国一斉学力テストを行ったのは、意味ある偏差値を手に入れ、幼い頃から子どもたちをランク付けしてエリートと非エリートに区分けしようという陰謀のためかもしれない。 (p76)

 擬似科学に嵌ってしまう人の典型的な心理メカニズム(本書第1章参照・・・)が垣間見える。

統計的には日本は史上最長の好景気と言われているが、私たちにはその実感がなく、ワーキングプアが続出していることからも、何かおかしいと思わざるを得ない。会社の生産高や売上げの統計を前年と比べると確かに良くなっているのだが、それは大企業の分しか考慮されていないために違いない。「統計でウソをついている」のである。 (p76)

 「実感」だの(ワーキングプアという)一事象へのこだわりだの、自分で気を付けろと言ってたのに。
 
 
 そんなわけで、ある意味“すごい本”と言えるかもしれないけど、まともに考えれば、ひどい本。

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 庄司薫 『赤頭巾ちゃん気をつけて(中公文庫、1973年)
 
 
 久しぶりに読み返してみた。青春小説の最高傑作。1969年の作品。

 これぞ“男の子”。

 理想と現実との間で、社会正義と自分自身のこととの間で、ホンネとタテマエとの間で、感情と理性との間で、性欲と理性との間で、葛藤し、(現実のどうしようもない自分に)打ちのめされ・・・。 それでも、開き直らずに健気に生真面目に頑張ろうとし・・・。 やっぱり、打ちのめされ・・・。

 世の男性というのは全てこういうコト・内的体験へのその人なりの反応の結果だとさえ、自分には思える。
 
 
 それにしても、確かに、現実、自分自身のこと、ホンネ、感情、性欲というのは強固な実在ではあるのだけど、それでも、理想、社会正義、タテマエ、理性といった虚妄のようなものの存在によってこそ、あるいは、その実在と虚妄との間の葛藤によってこそ、なんとか、社会は危ういバランスや健全さを保つことができているのではないだろうか。

 実在にだけ生きたり、虚妄を実在だと思いだしたり、実在と虚妄との葛藤の存在を忘れたりしたら、その社会やその人は危ういと見るべきだろう。
 
 
 戦後民主主義を生きる男の子の想いと行動を描いた傑作。


 与謝野馨 『堂々たる政治(新潮新書、2008年)
 
 
 前官房長官が最近の政治や自分のこれまでについて語っている新書。

 おもしろいの/有益なのは、これまでの人生の歩みを語っている4章と5章だけ。(8つ章があるうちの。)

 帯に書かれてる 耳障りなことを言う。それが私の仕事である。 というのの「耳障りなこと」として出てくるのは兼ねてからの持論である消費税10%論くらいなもの。

 あとは、(本人はそうは言わないけど)ただひたすら「バランスが大事/行き過ぎはダメ」と言ってるだけ。

 その他、自己矛盾や恣意的な自己正当化もしばしば。( 例えば、小泉構造改革(国家観なき市場原理主義らしい)は小泉首相が誕生した2001年の時点では正しかったけど、今はもうダメなんだって。あっ、でも、小泉首相は国民の意識を高揚させただけで実際には大して何もやってないとも言ってた。)

 中でも特にいただけないのが、当事者意識の欠如。政治家というより政治評論家みたいな物言いが多い。例えばこれ。

構造改革、格差、規制緩和といった大雑把な括りではなく、個々のケース、現実に即して、マイナーチェンジで済むものと、土台から仕組みを立て直すものとを峻別することが必要だ。その上で、日本中の英知を集めて、新たな仕組みを設計していく。
 これからの政治家の仕事としては、こうした日本のいろいろな仕組みの再設計が一層重要になるだろう。 (p80)

 ってのを、「はじめに」でではなく、章の終わりの「まとめ」で言ってしまうあたり。( あっ、でも、政治家は大まかな方向性を示すことが仕事で、あとの制度設計は官僚の仕事だとも言ってた。)
 
 
 耳障りなことを言わせてもらえば、もはや、百害あって一利なし。さようなら。

 昨日は、平田薫2nd写真集『卒業』発売記念・サイン&握手会@福家書店・新宿サブナード店に行ってきた。

 平田薫は最近の比較的メジャーなアイドルの中では唯一応援に値すると思ってるんだけど、実際の(応援)活動としては直接話せるイベントに行くくらい。( ということは、現状では数年に一度の写真集発売記念イベントに行くくらいというお寒い状況。まあ、あと、毎日更新されてるブログは読んでるけど。でも、こんな交流のない状況では“平田薫ファン”なんてものが成立しうるか疑問。 せいぜい“平田薫好き”止まりだろう。)

 まあ、そんなわけで、整理券が400~500枚くらい出るイベントに参加するのは久しぶりだったりする。( ちなみに、3冊購入でツーショットチェキの特典があるから、実際の参加者の数は200~300人くらいだと思われる。)

 この店のイベントに参加するのは初めてではなかったんだけど、(少なくとも)今では、最初は西武新宿駅につながってる地下通路(たまにホームレスの方たちがいるあそこ)に並ばされるシステムになっていた。

 で、整理券に書かれてる集合時間の5分前に行ってみたら、まだ、前の集合時間の人たち(だと思う)でさえ会場に案内されずに地下通路で待ってる状態だった。

 そこでは係の人がアンケート用紙を配ってた。もう集合時間になりそうだったし、終わって家に帰ってから書こうと思ってたら、どうやら、イベントが始まる前に書いておくべき内容だった。( そういうことはその場で言いやがれ。それと、このアンケート、作成・実施主体が事務所なのか店なのか何も記載されてないぞ。)

 結局、その地下通路では40分くらい(もちろん立ったまま)待たされた。しかも、西武新宿駅とJR新宿駅とを行き来するいっぱいの人たちの目にさらされたままで。ジーッと凝視する人、新奇な目で見る人、目を逸らす人など色々。はいはい、これがアイドルヲタクですよ。( ただし、平田薫の良さを見抜いた鑑識眼のあるヲタクたちではありますが。)

 この、アイドルイベントに参加するために公衆の面前に並ばされるのには未だに抵抗がある。若かりし頃に比べれば弱まったとはいえ。ちなみに、この福家書店の銀座店でのイベントの場合、銀座の中央通りに並ばされる。勘弁してほしい。

 ああ、福家書店の銀座店といえば、平田薫の1st写真集発売記念イベントが開かれた場所だ。そして、悪しき思い出の場所だ。この銀座店では店の2階でイベントを行うんだけど、階段に並んで待っていたとき、前の人がいっぱい荷物を詰め込んだリュックを背負ってたから階段を2段空けて並んでたんだ。そしたら、店員と思われるスタッフの人が「 階段は1段おきに並んでください 」みたいなことを言ってきたんだ。だから、「 狭くて無理ですよ 」みたいなことを言ったんだ。でも、その店員は優秀な小役人よろしく全く譲らないで杓子定規にルールを押し付けてきたんだ。そこで闘っても良かったんだけど、もう平田薫本人との対面が間近まで迫ってきてたから、やむを得ず、背中を若干反らし気味になりつつも一段上がったんだ。でも、心の中では怒りが燃えたぎってたんだ。「 アイドルに会わせてやるんだから言うことに従え 」って態度をされるのは屈辱的だ。こっちはベルトコンベアーを流れるモノでは断じてなく、心のある人間なんだから。てなことを思ってたら、すぐに平田薫と対面する順番が来た。いやぁ、もう、そんな状況だったから、当時16歳の平田薫を前にして、「 しっかりした大人になってね 」なんて言葉しか出てこなかったんだ。きっと言葉に相当気持ちはこもってただろうけど・・・。

 さて、地下通路で40分くらい待って、ようやく、50人くらいが2列になってイベント会場へ(強制収容所に連行されるみたいに)ぞろぞろと(20~30mだけど)移動した。イベント会場も店の横の空きスペースに設けられたものだから、待っている間は依然、さらしものではあったけど。( もちろん、平田薫本人とサイン&握手をする場所は仕切りで外から見えなくされている。)

 それで、そのイベント会場でさらに20分くらい順番が来るのを(もちろん立ったまま)待って(都合60分待って)、ようやく平田薫本人とご対面となった。

 まず、軽く会釈しながら平田薫の前に立ち、こちらから(下を向いてサインを書いてる平田薫に)一言話しかける。

 それに対して平田薫が(上を向いて)質問を投げかけてくる。

 それに対してこっちが応え、始めたら、平田薫の横に立ってるスタッフのおばさんに遮られ、手早く握手して「がんばって」と一言発しておしまい。

 おーいー。おばさーん。会話ぐらい成立させてくれよー。

 こんなことされたから言うわけじゃない(と少なくとも思ってる)けど、サインを書くために座ってる平田薫のすぐ横には、所属事務所のスタッフと思われる2人のおばさんが立ってるんだけど、この人たちが無愛想すぎるのだ。なんだか、彼女たちのために、その場が、平田薫が明るく振る舞おうとしているにもかかわらず、暗いよどんだ空気になっているのだ。もしかしたらイベントが始まって2時間とか経って疲れていただけかもしれない。けど、きっと違う。あのおばさんたちはきっと最初から無愛想なままだったと思う。もちろん、もしものことがあったらいけないし、時間もないのだから、緊張感が必要だと考えるのは理解できないこともない。

 けど、客商売をやってる人間が客を前にしてあんな憮然とした態度はないだろう。しかも、2年ぶりにファンと平田薫が交流できるせっかくの機会じゃないか。あーあ。

 だいたい、この事務所(東証一部上場・(株)アミューズ)は、平田薫なんていう超一流の逸材を抱えながらそれを活かすことに完全に失敗している。おそらく、グラビアを控え目にして(長澤まさみとか戸田恵梨香みたいな“お高い”)女優路線を歩ませようとしていたんだ。けど、調子に乗りすぎてグラビアを控えすぎたためか、知名度が上がらず、そもそも魅力を世間に浸透させることさえできないで失敗したのだ。それで、今頃になってDVD(7月25日発売予定)まで出さざるを得なくなったのだ。さらに言えば、平田薫の最大の武器である“美しさ/かわいさ”のマネージメントにさえ失敗した。( 今日のことについてのニュースの画像、および、数日前のブログの画像、参照。)

 特にイベントに絡んだファンとスタッフ(事務所や店員)との間の対立や怨念なんて、きっと有史以来存在するものなんだろうけど(もちろん良好な関係を築けているところもある)、世間から偏見で見られがちなアイドルファンは、とりあえず情報発信することが大事だと思うのだ。

 と、まあ、平田薫云々より、良いものに良いと言い、悪いものに悪いと言い、世の中が少しでも良くなることの方に興味がある、そういう人間のお話でした。

 でも、実際、今日のイベントの印象は、ここに書いた分量に呼応してるように思う。待ってるときのドキドキと色々なイライラばかりが思い出される。まあ、今日に限らず、比較的人気のあるアイドルのイベントなんて、大抵こんなもんなんだけど。

 写真集の感想は気が向いたら書くかも。


 吉岡忍 『ある漂流者のはなし(ちくまプリマー新書、2005年)
 
 
 2001年夏、エンジンの故障した小型船で37日間太平洋上を漂流し、奇跡的に生還した男性の話。

 37日間も、どうして生き延び、その間、何を考えていたのか。それを男性の言葉を中心に伝える。

 確かに、生死の境目を漂った壮絶な体験ではあるのだけど、そこで語られる内容は、実にシンプル。大海原で一人孤独に漂うという状態を感じさせるような、そんな静かさがある。

 この男性には“ヒーロー”とか“奇跡”とかそんな言葉は似つかわしくない。いわば、実にありきたりで平凡な、ただの小さな人間にすぎない。

 壮絶な日々の壮絶な体験を期待して読むと肩透かしを喰らう。裏表紙の「感動のドキュメント」を期待して読んでも肩透かしを喰らう。

 本としては読んでもおもしろくない。
 
 
 しかし、この男性が発見・救助されたのが2001年8月26日。9月11日の2週間前のことだった。また、この年の春には小泉旋風が巻き起こり、小泉純一郎が首相になっていた。

 そんな激動の時代と対比して考えるとき、このおもしろ味のない小本の、地に足の着いた描写とそこで描かれる小さな一人の人間から発される、大いなる輝きに、思わずハッとする。

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