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 池内了 『疑似科学入門(岩波新書、2008年)
 
 
 疑似科学の種類やメカニズムを概説した本。

 初心者には不親切で難しめ、多少でも知ってる人には浅くて物足りない。

 一応、この分野の先達であるカール・セーガン、マーチン・ガートナーの日本版たらんことを目指し、なおかつ、地球温暖化のような複雑で科学的に依然不確定なものまで「疑似科学」に含めることに存在意義を見出そうとしているようではあるけれど、成功してるようには思えず、大して意義・おもしろさは感じられない。

 そして何より、社会問題に関して語るところ(あちこちにある)で連発される、(「最近の若者は~」的)道徳的説教や、(教条左翼的)“擬似社会科学的俗説”には辟易する。疑似科学を批判する本においてあるまじき態度。

 いくつか例示しておこう。

電車に乗れば携帯電話をマナーモードにすることが推奨される。スイッチを切るのではなく、音が出ないだけで受信可能な状態にするのだ。マナーとして道徳心の発揮を求めており、乗客の多くもそれに従っている。それはそれで良いことのように見えるが、道徳を(マナーモードという)技術によって代行される事態が進行しているとも言える。道徳を人間関係のなかで身につけていくのではなく、技術力によって遵守させようとするのだ。
 (中略)
 この類の、道徳を代行してくれる技術はこれからも数多く開発されていくだろう。すでに、トイレ使用後に流れる洗浄水、自動的に水の止まる蛇口、人を察知すれば点灯する照明、携帯電話を使えなくする音楽ホール、自動消火するガスコンロなど、実に多くの製品が出回っている。それらは、本来人間の手で操作していたのだが、汚したり、つけっぱなしにしたり、事故を起こしたりしたものだから、技術によって代行しようというわけだ。
 便利になったのは事実だが、「お任せ」体質がはびこり人間はますます横着になっていくことも確実である。 (p96-97)

 「ゲーム脳」を批判してる同じ本の中の記述とはとても思えない。全く証拠さえ示そうとしていないあたりは、よりトンデモナイと言えるかもしれない。そもそも、人間の安全とか実質的なメリットより道徳を重んじる問題提起自体がどうかと思うけど。

文部科学省が全国一斉学力テストを行ったのは、意味ある偏差値を手に入れ、幼い頃から子どもたちをランク付けしてエリートと非エリートに区分けしようという陰謀のためかもしれない。 (p76)

 擬似科学に嵌ってしまう人の典型的な心理メカニズム(本書第1章参照・・・)が垣間見える。

統計的には日本は史上最長の好景気と言われているが、私たちにはその実感がなく、ワーキングプアが続出していることからも、何かおかしいと思わざるを得ない。会社の生産高や売上げの統計を前年と比べると確かに良くなっているのだが、それは大企業の分しか考慮されていないために違いない。「統計でウソをついている」のである。 (p76)

 「実感」だの(ワーキングプアという)一事象へのこだわりだの、自分で気を付けろと言ってたのに。
 
 
 そんなわけで、ある意味“すごい本”と言えるかもしれないけど、まともに考えれば、ひどい本。

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