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上杉隆 『官邸崩壊――安倍政権迷走の一年』 (新潮社、2007年)
安倍政権で起こった様々な出来事やエピソードを集めた本。
爆笑。
もちろん、政権はまだ継続中だし、話が詳しすぎたりするから、書いてある内容はある程度割り引いて読まなくてはいけないんだけど。
今の内閣の惨状の原因について、「秘書官が」とか「官房長官が」とか「大臣が」とか、(当事者からのものも含めて)色々言われているけど、どう見ても原因の7割方は安倍首相にある。
記者会見(官邸でのぶら下がり会見)での目線の持っていき方さえ自分で判断できなくて、毎日行われるぶら下がり会見ぐらいで「国民に直接訴える」とかいう抽象的理由から「カメラ目線」を助言してしまうような人を身近に置いてしまって、それをそのまま受け入れその不自然さに自分でも気付かないで、結局批判されて呆気なく元に戻す。そんな内閣総理大臣。
もはや今の安倍晋三に自己主張(自分自身への自信)なんてものは完全になくなっていて、小泉前首相に助言されればその通りにし、自民党の重鎮から批判されればその通りにし、国民から批判されればその通りにする。
となると、全て受け身で全て1テンポ遅れで行動や主張の一貫性もなくなる。
そんなわけで、今後の政治の動向を判断するに際して、もう安倍晋三個人に注意を注ぐ必要は(ほとんど)ない。
そんなどん臭い機械と化した首相が最近重視(従属)しているのが自民党の先生方だ。
組閣に際して、派閥の領袖様に入閣して頂いたり若造を排除したりと「玄人好み」という名の旧来の自民党への回帰を行って、もう小泉政権時代を「例外」としてしまった。
で、その自民党の先生方にとっての最大の懸案といえば「選挙」だ。
参議院では過半数割れしてるし(参議院は)解散もできないから当分この状態が続く。で、衆議院の方も前回大勝ちしてしまったから次回大幅に議席を減らすのは避けられないし、その上、今の内閣がもうほとんど泥舟状態で今解散でもしようものなら大敗して衆参完全逆転での政権交代が目に見えている。
この崖っぷち状態をどうすれば打開できるのか?
民主党との大連立は弱者・自民党にとっての楽観でしかない。スーパースターがでてきて人気を挽回するにも人材がいないし自民党の先生方はもうそういう人は勘弁願いたいと思っている。民主党が自滅することは大いにあり得る。そのために時間を稼ぐの悪くはない。ただ、時間が経てば経つほど安倍政権の失点の方も致命的に増大している可能性が大いにあり得る。
参院選後に安倍続投を(安倍本人のせいにしつつ)決断してしまった時点で自民党の敗戦は決まったようなものだ。あの時点で麻生にでも変えておけば、と思う。自民党の先生方も安倍首相も、導入されて10年も経つ小選挙区制の凝集的なメカニズム、ダイナミズムを理解していないのではないかと不思議になる。
こう色々考えてきてそれらを総合すると、一つの結論として、中選挙区制復活論が噴出するかもしれない。
ただ、中長期的にはともかく、目下の危機的状況を脱するには時間的に間に合わない。
となると、大局としては、無難に、「 安倍内閣総辞職 → 麻生内閣誕生 → 解散総選挙 → 衆院選での致命的敗北=野党転落を避ける 」しかない。
なら参院選後にやっとけと思うんだけど、そうしなかったことに特に考え抜かれた戦略など安倍首相にも自民党にもないのだろう。
あとは、いかにして総辞職のタイミングを利用するか/利用できるだけの状況を醸成できるか、に政治センスが問われることになる。
けど、とにもかくにも、最近の政治を見ていて思うのは、小泉政権時代とまじめに向き合おうとしないためか、自民党全体の政治感覚が国民世論とかなりズレを生じさせている、ということ。
だから、結局のところ、これから自民党がどう動くのかなんて分からない。勝手に自滅するかもね。